PHEVとREEVの弱点に終止符?CATLの「驍遥」バッテリーが航続400kmとナトリウムイオン技術で新たな可能性
10月24日、CATL(寧徳時代)はREEV(レンジエクステンダー付きEV)とPHEV(プラグインハイブリッドEV)市場向けに「驍遥(ぎょうよう)超級増混電池」(以下「驍遥」)を発表しました。このバッテリーは、REEVとPHEVを含むハイブリッド系の需要に合わせて専門的に開発・設計されたものです。
現在、中国の新エネルギー車市場では、純電気自動車(BEV)の成長率が鈍化し、PHEVとREEVが増加するという予想外の傾向が見られます。特にREEVは市場規模がまだ小さいため、増加ペースがより顕著です。乗連会の乗用車小売りデータによれば、今年9月、国内新エネルギー市場の浸透率は53%に達し、3カ月連続で50%を突破しました。また、新エネルギー車のうちハイブリッド系の比率はすでに43%に達しており、内訳はPHEVが32%、REEVが11%を占めています。これは、新エネルギー車のおよそ2台に1台がハイブリッド系であることを意味します。このため、ハイブリッド系は「ガソリン車から電気自動車への転換」過程における移行製品という位置付けではなく、独立したカテゴリーとして認識されています。
中国の新エネルギー車浸透率の上昇は、多くのガソリン車ユーザーがPHEVやREEVに乗り換えていることが背景にあります。これらのユーザーのニーズは、ガソリン代の節約と走行距離に対する不安の解消です。中国市場では、「PHEVは燃費の良いガソリン車として、REEVは航続距離に不安のないBEVとして支持されている」という見方もあります。一方で、ハイブリッド系には充電頻度が高い、充電速度が遅い、電量が低下した際の性能が悪いといった深刻な欠点もあります。
CATLの市場部総経理である羅堅氏は、この「驍遥」がハイブリッド系のこうした課題を解決し、消費者の「あれもほしい、これもほしいというニーズを満たす」製品であると説明しました。CATL国内乗用車事業部のCTOである高煥氏によると、「驍遥」は世界初の純電気航続距離400キロ超、4C急速充電能力を持つスーパーハイブリッドバッテリーであり、充電速度、純電気航続距離、電量低下時の性能、低温性能において優れたパフォーマンスを発揮する「全能型」製品であるとされています。
ではいったいどうやってこのような性能を実現できたのでしょうか?これはナトリウムイオン電池技術が導入されたおかげです。
CATLによると、まず、同社は初めてAB電池システム集成技術を開発し、ナトリウム電池とリチウム電池を一定の割合と配列でミックス・マッチさせ、直列・並列集成することで、電池の低温航続時間を5%向上させることができました。
リチウムイオン電池とナトリウムイオン電池の化学特性が異なるため、ライフサイクル内での自然放電や直流内部抵抗の変動、減衰特性も異なります。低温条件下で、同じ電池パック内に異なる材料体系の電池を適切に管理することは、電池設計および管理技術において大きな課題をもたらしました。
リチウムイオン電池とナトリウムイオン電池の低温性能の違いに対応するため、CATLは多次元容量マッチング均衡技術を開発し、低温環境で異なる材料を適切に区分して管理し、電池の状態を動的にマッチングさせることで一致性を高め、低温による電圧低下や電池の動作不能といった問題を効果的に解決しています。
さらに、CATLは全温度域電力量正確計算BMS技術を開発し、バッテリーの現在の電力量を正確に計算し、その後の一定期間で使用できる電力量を予測することが可能です。これによりシステム全体の制御精度が30%向上し、バッテリーの電力量と航続距離を正確に表示できます。
CATLはまた、バッテリーパックの冷却システムを技術改良し、冷却用の通水冷却板を2本の分岐路に設計しました。バッテリーが低温にある場合、周辺の分岐路には温水を通して保温を行い、電池内部が高温の場合には内部分岐で冷水冷却を行います。外部分岐は選択的に動作し、内部の熱を利用して外部電池を自己加熱します。
「驍遥」バッテリーは、CATLの3つ目のバッテリーブランドとして、「麒麟」バッテリー、「神行」バッテリーと並んでいます。現在、Li AutoやAVATAなど複数の自動車メーカーと提携を進めており、2025年にはこのバッテリーを搭載した車種が発売される見通しです。
もしCATLの宣伝通りに「驍遥」が優れた性能を発揮するのであれば、PHEVとREEVの弱点が大幅に克服され、ガソリン車ユーザーのみならず、今後BEVを支持していた多くのユーザーもPHEVやREEV市場にシフトする可能性が予想されます。
CATL「驍遥」バッテリー
写真:CATL