60億元規模の「全固体電池の国家プロジェクト」が審査段階へ、試作品のテスト結果は期待外れ

全固体電池には、寿命が長く、充電が速く、大容量で発火しにくく、低温下でも性能劣化が小さいという、非常に魅力的なイメージがあります。まさに「電池の最終形態」と言える存在として語られてきました。今年に入ってからは、BYD(比亜迪)やCATL(寧徳時代)以外の多くの電池メーカーや自動車メーカーも、全固体電池の量産計画について強気な見通しを示しています。

最近では、GAC(広汽)が「国内初となる自動車向け全固体電池の専用生産ラインを建設した」と発表し、SAIC(上汽)も全固体電池の生産ラインが全面的に稼働し、2027年に正式な量産・納入を開始すると表明しました。GOTION(Gotion High-Tech、国軒高科)もすでに生産ラインを完成させ、2026年に試験、2027年に車両搭載を行うとしています。一見すると、状況は非常に順調に見えます。

しかし、ここには注意すべき「言葉のトリック」があります。各社が言う「生産ライン」とは、実際には量産ラインではなく、中間的な試作・実験用ラインであり、本格的な量産ラインではありません。

こうした中、今年11月に中国工業情報化部が全固体電池の中間審査テストを実施しました。評価対象となったのは、まさにこれらの試作段階の電池ですが、結果は期待を下回るものでした。

この情報は、12月6日にJPモルガン・チェースが公表した調査レポートに基づくものです。情報源は匿名の硫化物系固体電解質の研究者およびテストに関する内部資料とされており、信頼性は比較的高いと見られています。

今回のテストは、2024年に工業情報化部の「60億元規模の全固体電池の国家プロジェクト」に参加した企業を対象としたもので、CATL、BYD、FAW(一汽)、SAIC、Geely(吉利)、Welion(衛藍新能源、NIO関連)などが含まれます。各社は、試作生産ラインから無作為に抽出したセル1本を提出し、2027年に車載可能と想定される仕様に近い形で評価を受けましたが、その結果は芳しいものではありませんでした。

まず、主な性能指標が基準に達していませんでした。審査で設定された目標エネルギー密度は400Wh/kgでしたが、実際に提出されたサンプルは370~380Wh/kgにとどまりました。さらに、一部企業の製品ではサイクル寿命が300回未満と、商用化には到底不十分な水準でした。急速充電性能も0.3C程度(満充電まで約3.3時間)にとどまり、液系LFP電池が15分前後で充電可能であることと比べると、大きな差があります。

最も重要な安全性の面でも課題が明確になりました。現在主流となっている硫化物系固体電解質は、およそ200℃で分解が始まり、硫黄やリンを含むため、熱暴走が起きると着火しやすい特性があります。その挙動は液体電解液と大きく変わらず、針刺し試験や200℃の加熱試験をクリアできていません。期待されていた安全性とは、かなりの乖離がある状況です。

さらに、硫化物系全固体電池は、正常に動作させるために固体界面を密着させる必要があり、非常に大きな外部圧力を加える必要があります。テストでは、各社が専用の加圧治具を用意してようやく評価が可能でしたが、車両に同様の加圧機構を組み込むことは、現実的とは言えません。そのため、現段階では車両搭載を前提とした評価すら困難な状況です。このほかにも、歩留まりの低さや、生産ラインコストの高さなど、多くの点で期待を下回っています。

レポートでは、技術的ハードルが比較的低い「半固体電池」案が、多くの企業に採用されている点にも言及されています。ただし、いわゆる半固体電池も実態としては言葉の操作に近く、同じ正極材料を用いる限り、エネルギー密度が大きく向上するわけではありません。さらに、来年には固体電池に関する国家標準が制定される予定で、その中で「半固体電池」という区分自体が排除される可能性もあります。

今回のテスト結果がもたらす影響について、専門家は、初期の60億元投入後、数多くの技術的課題が露呈したことで、国の政策スタンスが固体電池に対してやや慎重に傾く可能性があると見ています。

また、中国の各企業が掲げている量産スケジュールについても、過度に楽観視すべきではないとされています。固体電池は材料コストが液系電池の10倍以上とされ、歩留まりや品質のばらつきが大きく、システム統合の難易度も非常に高いためです。

もっとも、今回のテスト結果が示しているのは「道のりが長い」という事実であって、電池技術全体が停滞しているわけではありません。レポートでは、CATLが開発する「無負極」技術が名指しで評価されており、これは従来の液系リチウムイオン電池をベースにした技術進化で、エネルギー密度と蓄電性能を大幅に向上させるものとされています。早ければ来年にも量産が見込まれています。

最後に、今回の工業情報化省による全固体電池の審査テストは、中国の自動車メーカーや電池メーカーの一部に見られる「誇張表現」や「言葉のトリック」を浮き彫りにし、資本市場に冷水を浴びせる可能性があると言えます。ただし、テストの詳細は公表されない可能性が高く、影響は限定的かもしれません。

それでも、固体電池の開発動向については、いったん立ち止まって冷静に見極める必要があります。開発スケジュールに関しては、BYDやCATLが示している慎重な見方を踏まえ、量産化は2030年頃を想定するのが現実的でしょう。地場メーカーや国有メーカーを含め、各社から発信される前向きな情報についても、過度に楽観せず、慎重に受け止める姿勢が求められます。

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