新エネ車産業はナトリウムイオン電池に目を向け始める
11月8-10日に上海で開かれた「2022中国自動車フォーラム」では、動力電池メーカーと自動車メーカーは「異口同音に『原材料が高すぎ』と叫んだ」との報道をみた。多くの完成車メーカーは、リチウムイオンの価格が高騰し、納車が延期され、コストが上昇したなどと不満を訴えた。
リチウムの埋蔵量が限られ、リチウム価格の高騰は短期間で収まる気配はないため、多くの業界関係者は、唯一の解決方法は、リチウムを避ける技術パラダイムを見つけることだと主張している。その中で最も期待値が高いのはナトリウムイオン電池であり、ナトリウムイオン電池を推奨する企業の中でCATL(寧徳時代)が最も目立つ。CATLは2021年に初代のナトリウムイオン電池を発表した。セル単体のエネルギー密度は160Wh/kgに達し、世界最高水準であると報じられた。
ナトリウムイオン電池はリチウム電池の代替品になり得るのか。メリットとデメリットの両面からみてみよう。
ナトリウムイオン電池のメリット
埋蔵量では、地球上のナトリウム資源はリチウムの400倍と言われている。リチウム資源の70%が南米に分布し、少数の国や地域に集中しているのに対して、ナトリウム資源は世界広範囲に分布しており、陸地、海洋を問わず埋蔵量が豊富である。
三元リチウムでも、リン酸鉄リチウムでも、川上のリチウム原材料価格高騰の影響を避けられない。対してナトリウムイオン電池は高価なコバルトとリチウムを見事に避けることができると言われている。
ナトリウムイオン電池の熱暴走の限界温度はリチウム電池より高く、高低温性能はリチウムイオン電池より優れており、より高い安全性を備えている。
また一部のデータによると、現在量産中の三元リチウム電池とリン酸鉄リチウム電池の電力量80%の充電時間はそれぞれ約30分と45分で、それに対してナトリウムイオン電池は約15分と短い。
ナトリウムイオン電池のデメリット
ナトリウムイオン電池のエネルギー密度の上限はリチウムイオン電池を下回っており、新エネ車に搭載した場合の航続距離は短くなる。またナトリウムイオン電池には、充放電レートの悪さやサイクル寿命の短さなどの弱点がある。
またナトリウムイオン電池のコスト優位性は、大規模な量産化を前提しており、具体的なコストは定かではない。業界アナリストからは、ナトリウムイオン電池の低コスト説は理論上のものにすぎず、今後しばらくは、すでに成熟したリン酸鉄リチウム電池よりも高いとの声も聞かれる。
リチウム原材料の高騰というやむを得ない事情により、ナトリウムイオン電池は、その数多くの魅力的なメリットとともに脚光を浴びているように見えるが、ナトリウムイオン電池のデメリットも目立ち、リチウムイオン電池に完全に取って代わることはできず、むしろ長期的にはナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池が併存する状況が続くであろう。