リチウムイオン電池の「対抗馬」、ナトリウムイオン電池の普及が進まない理由

5月29日、乗連会はコンサル会社の科瑞諮詢と共同で、「2023年4月新エネ車『三電』システム洞察報告書」という報告書を発表した。

中国の動力電池産業は近年、ナトリウムイオン電池の量産化に積極的な布石を打っている。しかし、ナトリウムイオン電池に関しては、供給側の意欲と比べて需要側の自動車メーカーの興味は薄いことが明らかになっている。ほとんどの自動車メーカーは、新車にナトリウムイオン電池を搭載することにあまり関心を示していないことがわかった。

例えば、多くの電池メーカーが今年中に同社のナトリウムイオン電池の量産を開始すると発表したが、実際にそれを搭載した車種はごくわずかで、現時点では奇瑞、JAC、江鈴といった地場メーカーの3つの小型EVのみである。

報告書では、ナトリウムイオン電池がまだ実用化されていない背景を指摘している。まず第一に、ナトリウムイオン電池は産業化の初期段階にあり、コア技術に関する争いが存在し、サプライチェーンの準備が不十分であり、生産工程が未熟である。これらの要因により、ナトリウムイオン電池はナトリウムの豊富な供給源を持ちながらも、すぐにコスト優位を確立することができない。

第二に、炭酸リチウムの価格が急落し、ナトリウムイオン電池とのコスト差が縮小しているため、自動車メーカーのナトリウムイオン電池への切り替え動機が短期的に低下している。初期コストに関して、報告書によると、ナトリウムイオン電池は1トン当たり49257.7元であるのに対し、リチウムイオン電池は1トン当たり51470.15元であり、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池のコストを4.3%しか下回っていないことが分かっている。ある業界専門家は、「炭酸リチウムの価格が1トン当たり15万元以下になると、エネルギー密度がより高いリチウムイオン電池と比較して、ナトリウムイオン電池のコスト面での優位性がなくなり、動力電池の市場を失うだけでなく、エネルギー貯蔵分野でも使用できなくなる」との見方を示している。

報告書によると、今年の上海モーターショーでは、多くの電池メーカーがナトリウムイオン電池を展示したが、それらは主力製品としてではなく、むしろ大口顧客向けの製品リストは依然として高エネルギー密度電池システムのソリューションプランと超急速充電技術に焦点が当てられていた。

ナトリウムイオン電池の産業化は、実際にはリチウムイオン電池とのコスト差の大きさに関連していることが、今回の報告書で明らかになった。

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