工業情報化部、自動車操作系標準を改定へ――重要操作に物理スイッチ義務化

中国工業情報化部(MIIT)は2月15日、装備工業一司が全国自動車標準化技術委員会を組織し、強制国家標準「自動車操作系・表示装置および信号装置の標識」の改定作業を進め、意見募集案を公表したと発表しました。現在、社会各方面から広く意見を募集しています。
今回の改定では、走行安全に直結する機能について物理的な操作装置の装備を求める方針が明確に示されており、運転時の安全性向上を主な目的としています。
意見募集案によると、該当機能を備える車両は、以下の操作について物理的な操作装置を搭載する必要があります。
- 方向指示器(ウインカー)の操作
- 非常点滅表示灯(ハザードランプ)
- 前進・後退・ニュートラル・パーキング各シフト操作
- パワーウインドウ操作
- ワイパーおよびデフロスター操作
- 灯火類の制御装置
- ホーン操作
- 運転支援システムの起動スイッチ
- 車載緊急通報システム(AECS)操作装置
- 電気自動車の駆動システム電源遮断装置 など
これにより、ウインカー、シフト操作、ウインドウ操作、運転支援機能といった車両の主要な操作については、今後センターディスプレイのみで完結させることは認められず、物理ボタンやスイッチによる操作が必須となる見通しです。
新基準は、現行のGB4094—2016「自動車操作系・表示装置および信号装置の標識」に代わるものとなります。
改定案では、新たに物理操作装置の種類および技術要件が追加されました。その中心的な考え方は、運転安全性の向上にあります。
基準では、重要な操作装置について、手が届きやすいこと、確実に操作できること、視線を移さず操作可能であることなどの要件を満たすことが求められています。
運転者が視覚情報に過度に依存することなく操作結果を認識できるようにすることで、車載ディスプレイへの依存を低減し、運転中の注意散漫を抑制するとともに、操作の信頼性と有効性を高める狙いがあります。
また、物理操作装置の設計についても具体的な要件が示されています。例えば、
- 操作機能をディスプレイ内のみに配置してはならないこと
- 操作位置を固定すること
- 操作面の有効サイズを10mm×10mm以上とする、または段差・隙間・突起などにより触覚で識別可能とすること
- 操作時に触覚または聴覚によるフィードバックを備えること
などが求められています。これらは、触覚や身体記憶による操作を可能にし、運転者の視線を常に前方へ向けた状態で操作できるようにすることを目的としています。
電動化および知能化の進展に伴い、車内インターフェースは大きく変化しています。近年では仮想操作系やタッチスクリーン操作が急速に普及し、一部車種ではディスプレイ上の操作のみでシフトチェンジを行う「タッチスクリーン・シフティング」方式も採用されています。
例えばテスラは2021年以降、一部モデルにおいて従来のシフトレバーを廃止し、センターディスプレイ上のスワイプ操作によって前進・後退を切り替える方式を導入しました。この設計は先進性が評価される一方、操作時の視線移動増加による安全性への懸念も指摘されています。
業界では、タッチ操作は物理ボタンと比較して視線逸脱時間が約1.5秒長くなる可能性があるとの見方もあり、安全リスクにつながる可能性が議論されています。
なお、新基準は画面操作そのものを禁止するものではなく、物理操作装置の併設を義務付ける点が特徴です。メーカーは物理操作と画面操作を併存させる設計を選択することも可能とされています。
意見募集案では、ADASなどの機能増加に伴い、操作装置や表示・警告装置の種類が急増している点にも言及しています。車種ごとに同一機能で異なる表示が用いられるケースが増えており、利用者の混乱を招く可能性があることから、標識体系の統一が必要とされています。
今回の改定では、以下の内容も盛り込まれました。
- 適用範囲の見直し(電気自動車に適さない記述の削除)
- 表示階層および視認性要件の追加
- 駆動用バッテリー故障警告表示の新設
- 各種機能標識の統一規格化
本標準の改定作業は、工業情報化部主導のもと2023年に正式に開始されました。中国汽車技術研究中心、吉利汽車研究院(寧波)、一汽フォルクスワーゲン、BYD、長城汽車、中汽研汽車検験中心(天津)などの完成車メーカーおよび試験機関が策定作業に参加しています。
業界では、今回の改定について、急速に進む車両のデジタル化を背景に、デジタルインターフェースと走行安全性のバランスを再構築し、自動車のヒューマンマシンインターフェース(HMI)設計における統一的かつ明確な基準を整備する取り組みと位置付けられています。