第十三事業部を撤廃――BYDが進める組織の「スリム化」とその狙い

12月27日、BYDが新たな組織再編に着手し、第十三事業部を正式に撤廃したことが明らかになりました。同事業部が担っていた金型および車灯(ライト)関連事業は、それぞれ自動車工程研究院と第十一事業部へ移管されます。
この内部調整は、市場に大きな衝撃を与えるものではありませんでしたが、極めて明確で重要なシグナルを発しています。すなわち、BYDの組織運営の軸足が、ここ数年続いてきた「規模拡張」から、「効率最優先」へと移行しつつあるという点です。
ここ数年のBYDに対する最も直感的な評価は、「大きい」という一言に集約されます。車種数は増え続け、ブランド階層も拡張され、事業部の数も膨らみ、完成車から主要部品に至るまで、ほぼ自動車産業チェーン全体をグループ内部に取り込んできました。こうした高度に垂直統合された体制こそが、BYDが短期間で巨大化する原動力だったことは間違いありません。
だからこそ、今回の調整の本質は、個別の事業内容そのものではなく、その方向性にあります。これは新たな事業を積み上げる動きではなく、明確に「引き算」を選択した再編だからです。
撤廃された第十三事業部は、決して周縁的な存在ではありませんでした。その前身は2005年設立の弗迪精工であり、金型の設計・製造、車灯や射出成形部品といった重要部品を長年手がけてきました。さらに、軌道交通向け部品の研究開発にも関与しており、能力面において方向性の誤りがあったわけでも、まして失敗と呼べるものでもありません。
問題は、能力そのものではなく、その配置にありました。
従来の組織構造では、第十三事業部は研究開発部門と完成車製造部門の中間に位置し、開発意思決定に密着しているわけでもなく、かといって生産現場と一体化しているわけでもない状態でした。その結果、意思決定の経路や部門間の連携がどうしても長くなり、車種数の増加や開発スピードの加速とともに、横断型協調の限界が次第に顕在化していきました。
こうした背景のもと、今回の再編の考え方は非常に明快です。能力を、それを最も必要とする場所へ戻すということです。
具体的には、金型関連事業を自動車工程研究院へ統合し、完成車の研究開発と直結させることで、新プラットフォームや新型車の設計段階から製造性を同時に検討できる体制を構築しました。また、車灯事業は第十一事業部に一本化され、プレス、溶接、塗装、最終組立といった完成車製造工程と縦方向に貫通した管理体制が整えられています。これにより、設計から量産までを一体でマネジメントすることが可能になります。
従来、部門の境界を前提としていた横断的な協調関係は、縦型一体管理へと再構築されました。中間調整の層を減らし、組織構造そのものを使って意思決定と実行のスピードを高めようという狙いです。
この動きを、単なるコスト削減を目的とした守りの縮小と捉えるのは適切ではありません。現時点のBYDは、技術力も生産能力も受注も不足していません。本当に希少になっているのは、新型車を企画段階から量産に至るまで、いかに速く回せるかという時間そのものです。
とりわけ、第十一事業部の役割が今回の再編で大きく拡張された点は注目に値します。外観や機能面で変更頻度の高い車灯を完成車製造の管理下に置くことで、設計、工程、量産が一つの管理ラインに集約されました。この発想は、従来の事業部単位の分業というよりも、「スーパー工場」に近い統合型の考え方だと言えます。
同時に実施された人事配置も、この方向性を裏付けています。主要ポストでは、経歴や年功よりも、実行力やシステム全体を束ねる能力が重視されるようになりました。複雑な構造をいかにシンプルで高効率なプロセスに落とし込めるかが、評価の軸になりつつあります。
これは単なる人事異動ではなく、管理評価の考え方そのものが変わり始めていることを意味しています。
外部からは、今回の再編をBYDの組織の「スリム化」と見る向きもありますが、より正確に言えば、BYDが「規模拡大の次の段階としての効率」に本格的に向き合い始めたということでしょう。企業が「できるかどうか」から「いかに速く、いかに安定してできるか」へと関心を移すとき、組織は必然的にスリム化していきます。
すでに世界の新エネルギー車市場で最大級の規模に達したBYDにとって、組織を際限なく膨らませることは、もはや競争力の保証にはなりません。むしろ、規模の頂点であえて「スリム化」を選ぶことは、生存への不安を脱し、長期的な優位性をどう築くかを考え始めた証左とも言えます。