BYDとイオンが販売提携、日本でEV販売拡大を狙う

BYDは、日本の小売大手イオン(Aeon)と販売提携を結び、年内にも両社による双方向の展開を実現する計画です。BYDは日本国内の販売店網を100店舗に拡大し、イオンは全国約30か所のショッピングモールや百貨店内に電気自動車の販売コーナーを設け、消費者に新しい購車体験を提供します。

提携内容によると、イオンはBYDの日本市場における販売代理的な役割を担い、注文の受付や契約手続きを行うほか、将来的にはBYDから電気自動車を直接輸入する計画もあります。消費者は商業施設内の展示スペースで車両を実際に見たり触れたりできるだけでなく、イオンの割引プログラムやポイント制度を活用することで、BYDのコンパクトEV「ドルフィン」を200万円未満で購入できるようになります。

これは、イオンが導入する購入支援策――車両価格の割引、電子マネー「WAON」へのポイント還元、家庭用充電設備の補助など――によるもので、さらに日本政府や各自治体によるEV補助金を加えると、総額でおよそ100万円相当の優遇が受けられる見込みです。

従来、日本の自動車販売はメーカー直系のディーラーが主導しており、新車販売から整備まで一体化した仕組みが取られてきました。しかし、土地代や人件費といった高い固定コストが車両価格を押し上げる要因となっており、BYDにとって販売拠点の拡大を難しくする一因となっています。

イオンは全国に展開する数百のショッピングモールをショールームとして活用し、クルマの販売を生活動線の中に取り込もうとしています。週末の買い物ついでに試乗し、その場で契約、さらに施設内の充電スペースで充電まで完結――そんな購車体験を実現する構想です。

中国メディアによると、BYDはイオンが保有する膨大な日本の消費者購買データにも着目している可能性があります。イオンから提供を受けた顧客データを分析することで、潜在的な顧客層をより精密に把握することが可能になります。たとえば、アウトドア用品をよく購入する家庭はSUVに関心を示しやすく、育児関連の商品を多く購入する顧客は安全性能を重視する傾向があります。小売大手が持つデータと販売ネットワーク、そしてBYDの製品開発力が組み合わさることで、新たな市場チャネルが生まれつつあります。

実は、イオンモール内に自動車展示コーナーを設けるのはBYDが初めてではありません。日本の一部ブランドも同様の取り組みを行っていますが、それによって劇的に販売が伸びたという話はあまり聞かれません。

もっとも、BYDの日本市場での拡大は容易ではありません。9月、BYDは中国国内市場で得意とする価格競争の手法を導入し、最大50%の値下げを含む販促を実施しましたが、日本自動車輸入組合(JAIA)の統計によれば、同月の販売台数は802台にとどまりました。今年1〜8月の平均月販272台からは大幅に増えたものの、値下げを終了すれば販売台数がすぐに落ち込む可能性も高いとみられます。

それでもBYDは、イオンとの協業を足がかりに、販売網とブランド認知を拡大し、日本市場での存在感を高めることを目指しています。

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