BYD、米政府を提訴――IEEPA関税の違法性を主張し全額返還を要求

BYDはこのほど、米国政府を相手取って正式に訴訟を起こし、2025年4月以降に支払ったすべての関税の返還を求めています。
一部メディアが米国国際貿易裁判所の公開資料を確認したところによると、BYDの米国子会社4社――BYD America LLC、BYD Coach & Bus LLC、BYD Energy LLC、BYD Motors LLC――が2026年1月26日に訴状を提出しました。案件番号は26-00847とされています。訴状の中でBYD側は、トランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠として越境取引に高額関税を課したことは権限の逸脱に当たると主張しています。その理由として、同法の条文には「関税」という文言が一切含まれておらず、大統領に国境を越える取引に対して関税を課す権限を与える規定も存在しない点を挙げています。
BYD側は今回の訴訟において、主に以下の三つの要求を掲げています。第一に、IEEPAに基づく米国政府の追加関税措置は違法であり無効と判断すべきであること。第二に、関連する行政機関が当該関税措置を継続して執行する権限を失うよう、裁判所に対して恒久的な差し止め命令を出すこと。第三に、BYDがこれまでに支払った関税およびその利息を返還することです。
なお、BYDは現在のところ米国市場で乗用車を販売していませんが、現地での事業展開は幅広く、電動バスや商用車の製造、バッテリーおよびエネルギー貯蔵システム、太陽光パネルなど多岐にわたっています。同社の公式情報によれば、北米子会社はカリフォルニア州ランカスター市にトラック製造工場を構えており、約750人の従業員を抱えるなど、米国内における重要な生産拠点となっています。
今回の訴訟の背景には、2025年2月以降、米国政府がIEEPAを根拠として中国やメキシコなどからの輸入品に対し相次いで高関税を課してきた経緯があります。BYDの米国子会社が海外から輸入する電池や電動車部品、エネルギー貯蔵関連製品などがこの措置の影響を受けたとみられており、コストの急増に加え、米国におけるサプライチェーンや事業運営にも大きな負担が生じていると指摘されています。
実際、BYDが訴訟を起こす以前から、米国で事業を展開する数多くの外国企業が同様の問題について米国の裁判所に法的異議を申し立てており、トランプ政権によるIEEPAの適用の正当性が広く疑問視されてきました。特に注目を集めた別の訴訟では、米国国際貿易裁判所および連邦巡回控訴裁判所がいずれも「IEEPAは大統領にこのような広範な関税を課す権限を与えていない」との判断を示しています。BYDも今回の訴状の中でこの判例を引用し、自社に課された関税についても同様に「大統領の権限逸脱」に当たると主張し、同じ法的論理に基づく判断を求めています。
現在、関連案件については米国最高裁判所が上訴を受理していますが、最終的な判断はまだ下されていません。大統領の権限逸脱にあたるかどうかは極めて重大な影響を持つ司法判断であるため、最高裁は慎重に審理を進めており、拙速な判断は行わないとの見方が一般的です。