BYD、インドでの10億ドル投資計画が「安全保障上の懸念」で拒否される
中国の自動車メーカーBYDがインド政府に対して、10億ドル相当の投資計画を提出し、インドの現地企業と提携して電気自動車と電池の製造を行う計画が進行中であることが、ロイター通信によって報じられました。
ロイターは3人の関係筋の情報として、BYDがインドの民間企業であるMegha Engineering and infrastructure社(以下は「Megha」)と共に、合弁電気自動車会社を設立する計画をインドの規制当局に提出したと伝えています。
BYDは2007年にインド支社を設立し、ソーラーパネル、バッテリーエネルギー貯蔵、電動バス、電動トラック、電動フォークリフトなどの事業を展開しています。
2022年10月の時点で、BYDはインドでの工場建設を検討しており、2030年までにはインドの電気自動車市場で40%のシェアを目指していると報道されていました。
BYDの関係者によると、BYDのインド支社は2カ所目の工場の建設も検討しており、適切なタイミングで関連情報を公表する予定です。
さらに、BYDは2022年に2億ドルをインドへの投資に充て、電動SUV「Atto 3」とEV「e6」の販売を行っており、今年後半には高級電動セダン「Seal」を発売する計画も進行中です。
一方、7月22日の報道によれば、インドの規制当局は「投資の安全性」を理由に、BYDとインドの民間企業Meghaの合弁工場設立申請を拒否したと明らかにされました。
報道によると、BYDとMeghaは先にインド産業内部貿易新興省(DPIIT)に申請を提出し、インドの都市ハイデラバードに合弁工場を設立し、電気自動車と電池の生産に協力する提案を行っていました。
しかし、インド産業内貿易振興省はこの申請について他省庁によるヒアリングを行いました。その際、関係当局者によると、インド当局者からは「中国のインド投資の安全性に対する懸念」が示されたと報じられています。また、別の関係当局者は、現行の規則ではこのような投資を認めることはできないとの姿勢を示しました。
エコノミック・タイムズ紙によると、2020年4月にインド政府が外国直接投資政策を変更し、インドと陸地を接する国からの投資に政府の承認を義務づけたことも指摘されています。「政策は特定の国に言及していないが、中国企業による感染拡大後のインド事業体の買収を阻止することが狙いだ」との見方もあります。
さらに、エコノミック・タイムズ紙によれば、「一部の中国自動車メーカーはインドの代理パートナーを隠れみのに採用しており、実際には製造能力をインドに移転するいかなる長期的な戦略的意図も持っていない」との主張もあり、そのためDPIITは、インド企業と関係のある中国自動車メーカーの審査を開始しているとのことです。
インド市場は大きいが、同国の事業環境、投資環境が他の途上国に比べて厳しいことは広く知られており、多国籍企業に対しては抜き打ち検査が頻繁に行われ、高い関税も課せられていると報じられています。
中国スマホ大手のvivoやシャオミなどが、また英国の通信大手ボーダフォンや米国IBMなどの多くの企業に対して、税金調査を理由に抜き打ち検査を行いました。
過去5年間で、ハーレーダビッドソン、フィアット、日産傘下のダットサン、GM、フォードを含む自動車メーカー5社が、相次いでインドから撤退しています。
最近、アップルのサプライヤーであるフォックスコンは、インド企業Vedantaとの195億ドルの投資プロジェクトから撤退することを発表しました。このプロジェクトは、インドにチップ製造工場を建設する予定でした。
今回のBYDのインドへの合弁工場建設計画は、過去の製品販売と異なり、資産投入であるため、身動きが取れなくなる状態に陥る可能性があります。この点について、最近555億ルピー(約940億円)の資産が差し押さえられたシャオミが苦い経験をしたという教訓があります。