BYD、メキシコ工場建設計画を一時凍結〜地政学的リスクが影響、ブラジル工場の生産強化に注力

7月3日、BYDはメキシコでの大型工場建設計画を一時凍結したことを明らかにしました。これは、地政学的緊張や米国の前大統領トランプ氏の貿易政策による不確実性が主な理由です。
BYDの執行副総裁である李柯氏はブラジル・バイーア州でのインタビューで、「地政学的な要因が自動車業界に大きな影響を与えています。現在、多くの企業が各国での戦略を見直しており、状況がはっきりするまで決断を保留している」と語りました。同氏は、美洲地域での事業拡大への意欲は変わらないものの、新たな投資については現時点で具体的なスケジュールがないことを示しました。
BYDは2024年2月にメキシコで電気自動車工場を建設する計画を発表しており、同年2月14日付のロイター通信は、同社がメキシコでの工場立地調査や現地当局との交渉を進めていると報じています。候補地は新レオン州やバシオ地区とされています。メキシコに工場を設けることで、米国市場への輸出コストを抑え、米・加・墨協定による関税優遇を受ける狙いがありました。
一方、BYDはアジア以外で初となる工場をブラジル・カマサリに稼働させており、現地時間7月1日に初の車両ラインオフ式典を行いました。李柯氏は同工場について、「年間15万台の生産能力を持ち、約2年後には30万台に拡大する予定です。中国から輸入した半完成車の最終組み立てを行い、2か月後には商業生産を開始する見込みです」と説明しています。さらに、生産能力を将来的に倍増する計画もありますが、詳細は明らかにしていません。
また、BYDブラジル法人の上級副社長アレクサンドレ・バルディ氏は、同社が工場一期目で組み立てる自動車キットの輸入に対し、ブラジル政府に12か月間の関税免除を求めていることを明かしました。ブラジル政府はまだこの要望に対する回答を示していません。
総じて、BYDはメキシコでの工場建設を一時見合わせているものの、ブラジルでの生産体制を強化し、南米市場での存在感を高めようとしています。李柯氏は「世界の貿易環境が不透明な状況にあるため、状況を見極めながら計画を進めていきます」と語っています。