新長安汽車 会長「2030年に年販500万台へ NEV比率60%超・海外30%超を目指す」

7月29日、「中国長安汽車集団有限公司(以下、新長安汽車)」が正式に設立され、第一汽車(FAW)や東風汽車に続き、中国で3番目となる中央政府直轄の自動車国有企業(中央企業)となりました。
新長安汽車は、長安汽車、辰致集団など117社の企業再編によって設立され、登録資本金は200億元、総資産は3,087億元、従業員数は約11万人に上ります。今回の再編は、中国自動車産業の構造に大きな変化をもたらすものと位置づけられています。
新たな国有企業の戦略と発展目標
7月30日に行われたメディア向け説明会において、新長安汽車の会長である朱華栄氏は、2030年までに年間販売・生産台数500万台を目指す方針を発表しました。そのうち、新エネルギー車(NEV)の販売比率は60%を超える見込みであり、海外販売比率も30%を超える計画です。また、世界の自動車ブランド上位10社入りを目標に掲げています。
この目標を達成するために、新長安汽車は総合的な戦略を策定し、以下の3つの主要プランを展開しています。
1. 新エネルギー車関連計画(シャングリラ)
- 高水準のNEV専用プラットフォームを構築
- プラットフォームの汎用性を向上させ、年産100万台規模に拡張
- 次世代電池やIGBTの産業化を推進し、電池リサイクルやデジタルエネルギーといった分野にも注力
2. インテリジェント化計画(北斗天枢)
- 「進化可能なスマートカー・ロボット」の実現を目指す
- 中央集中型ネットワーク構造(SDAプラットフォーム)を展開
- 「天枢」ブランドの自動運転システムを搭載
- ファーウェイ(華為)、テンセント(騰訊)などとの協業を深め、スマートテクノロジープラットフォームを構築
3. グローバル戦略計画(海納百川)
- 「152(中国を基盤とし、5つの海外主要地域をカバー、20カ所の海外工場を設置)」という海外展開戦略を推進
- 海外生産拠点を20カ所計画し、すでに9カ所が稼働中
- タイ・ラヨーンのNEV工場は2025年5月に稼働開始
- 海外販売ネットワークは100カ国以上に広がり、拠点数は約14,000に達する見込み
三大ブランドの戦略展開
新長安汽車グループは、以下の3ブランドを柱として新体制のもとで協調的に発展を進めています。
- AVATR(阿維塔):高級スマート電動車に特化し、上半期の販売は前年同期比で2倍。25カ国に進出
- DEEPAL(深藍汽車):中高価格帯市場(15〜30万元)をターゲットに、累計販売台数は50万台を突破
- 長安啓源(QIYUAN):ファミリー層向けモデルを展開。上半期の販売台数は16万台(前年比+22.9%)で、「Q07」モデルは20万元以下の中型NEV SUV市場において2ヶ月連続で首位を獲得
DEEPALは技術の海外展開を担い、長安啓源は自動運転技術を中心とした研究開発を強化。AVATRは引き続き高級セグメントを担当します。
業績と見通し
2025年上半期の実績として、新長安汽車の営業収益は1,469億元、完成車販売台数は135.5万台で、過去8年間で最高水準に達しました。
このうち、新エネルギー車の販売は45.2万台(前年比+49.1%)、海外販売は29.9万台(前年比+5.1%)でした。2025年通期では、販売台数が300万台を超え、営業収益は3,550億元に達する見通しです。