Chery、ドイツでの現地生産を計画 VWとの提携報道も浮上

「Automotive News Europe」が4月29日に報じたところによりますと、中国のChery(奇瑞汽車)は欧州市場への進出を加速させており、近くフォルクスワーゲン(VW)と契約を結び、ドイツ国内の工場で車両を生産する予定であるとのことです。事情に詳しい関係者によりますと、この工場は、Cheryが新たに立ち上げた大衆向けブランド「Lepas(レパス)」の生産に向けた準備として活用される見通しです。
Lepasは、4月25日に正式発表されたCheryの新ブランドで、人気SUV「Tiggo(瑞虎)」シリーズをベースに、グローバル市場をターゲットとして開発されました。欧州市場向けの第一弾製品としては、2種類のコンパクトSUVと1種類のミッドサイズSUVが計画されており、それぞれに電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、内燃機関(ICE)モデルのバリエーションが用意され、発売は来年を予定しています。
ただし、Chery側はこの報道に対して明確なコメントを避けており、ドイツでの工場設立に向けた交渉中であることは認めるが、パートナー企業がフォルクスワーゲンであるかどうかは明言していません。
Cheryの国際業務担当副総裁である張貴兵(チャーリー・チャン)氏は、最近行われたメディアおよびディーラー向けイベントにおいて、「最終的にプロジェクトが実現するかどうかは、コスト、サプライチェーン、労働組合制度、規制要件など、複雑な要因を慎重に評価する必要がある」と述べました。
フォルクスワーゲンは現在、ドイツ国内でのコスト削減策を進めており、ドレスデンおよびオスナブリュックの2つの組立工場の閉鎖を検討しています。これに対して、Cheryをはじめとする複数の中国自動車メーカーが関心を示しています。業界関係者によりますと、Cheryのような中国メーカーを誘致することによって、工場閉鎖に反発する労働組合の不満を和らげると同時に、Cheryにとっても関税負担の軽減が期待できるということです。ただし、フォルクスワーゲンの広報担当者は「うわさにはコメントしない」と回答しています。
Cheryは昨年、スペイン・バルセロナにおいて現地生産を開始しており、現地企業Ebroと提携し、旧日産工場を改造して年間20万台規模のSKD(セミノックダウン)方式による組立を行っています。現在、この工場では「Tiggo 7」プラットフォームを基にした「Ebro S700」の組立が主に行われており、塗装済みの車体と内装を含む部品は中国・蕪湖の工場からSKD形式で輸出され、スペイン国内でサスペンション、車軸、パワートレイン、ホイールの取り付けが行われています。
さらにCheryは、「Jaecoo(ジェークー)」および「Omoda(オモダ)」の電動モデルについても、現地生産比率の向上を図る方針を示しており、これは関税回避を目的としたものではないことを強調しています。
チャーリー・チャン氏は、「中国国外の部品比率を40%以上とし、最終的には50%以上を目指したい。たとえば、バッテリーを中国以外の地域から調達することも検討している」と述べました。
中国最大の自動車輸出メーカーであるCheryは、今年第1四半期に25万5,465台を海外に輸出しており、ロシアなどではSKD方式による現地組立も行っています。
Cheryは2025年末までに、「Omoda」と「Jaecoo」ブランドの欧州販売国を現在の7か国から19か国に拡大する計画を立てており、フランスやドイツ市場への進出も含まれています。特にドイツでは、年内に100の販売店との契約を目指しています。今年第1四半期には、OmodaとJaecooの2ブランドで欧州において15,799台を販売しており、わずか2モデルによる実績です。