奇瑞iCAR、国内で不発…海外市場に望みを託す

中国の新エネルギー車(NEV)の海外進出が加速する中、地方国有メーカーの奇瑞汽車(Chery Automobile)の独立電動ブランド「iCAR」も積極的に国際市場への展開を進めています。
英メディアAutoCarが4月30日に報じたところによりますと、iCARは2025年に正式に英国市場に参入し、「iCaur」という新名称で登場する予定です。これはAppleの「iCar」商標との衝突を避けるための措置です。iCaurは奇瑞のグローバル拡張戦略の重要な一環として、電動オフロード車を武器に英国市場に攻勢をかけてまいります。第一弾として、昨年中国で発売されました小型純電動SUV「V23」が導入される予定です。
iCAR V23
写真:奇瑞 iCAR
V23はタフなスタイルを前面に打ち出し、デュアルモーターの4WDシステムを搭載しています。最大出力は208馬力、82kWhの三元系リチウムバッテリーを搭載し、航続距離は500kmに達します。その後、iCARはレンジエクステンダー式SUV「V25」や、Jeep Avengerの競合モデルとなる小型電動SUV「V21」の投入も予定しており、2027年までに100カ国への進出と2000店舗のショールーム設立を目指してまいります。すでに奇瑞は、傘下のOmodaおよびJaecooブランドを通じて英国市場で一定の認知度を得ており、本年の第1四半期には6430台を販売しています。
しかしながら、国内市場におけるiCARの販売実績は、決して好調とは言えません。ブランド初の量産モデル「iCAR 03」はネット上で話題を集めたものの、実際の販売にはなかなか結びついていないのが現状です。2024年上半期の累計販売台数は1万7851台で、月平均では3000台にも届きません。3月以降には一時4000台前後まで回復し、10月には5644台を記録しましたが、その後は減少傾向が続き、2025年1月には1175台にまで急落しています。もちろん、これは奇瑞が当初描いていた期待には程遠い結果です。
10.98万元という手頃な価格で販売される純電動の「ライトオフロードSUV』としては、新興ブランドとして一定の成果と評価することもできますが、大規模な生産体制と販売力を持つ奇瑞にとっては、やや物足りない数字と言えるでしょう。
iCAR 03自体は決して「品質に問題のある車」ではありません。航続距離は401〜501km、急速充電やデュアルモーター4WD、L2レベルの運転支援機能、外部給電なども備えており、コストパフォーマンスも優れています。しかしながら、最大の課題はその「立ち位置」です。軽オフロードをうたう純電動車でありながら、全長は4.5メートル未満で車内も狭く、キャンプやロングドライブを想定した使い方では、航続距離も車内空間も安心感に欠けています。さらに、「角ばったデザイン」でオフロード感を演出しているものの、機能面では本格的なオフロード車とは大きな差があります。
市場の反応を見ますと、奇瑞は少なくとも三点において楽観的すぎた可能性があります。第一に、若年層の純電動オフロード車に対する受容性を過大評価したこと。第二に、角張ったデザインの魅力を過信したこと。第三に、実用性や航続距離への不安を抱える一般消費者のニーズを過小評価したことです。競争が激化するNEV市場において、月間1万台レベルの販売ができなければ、世間の注目も販売実績も維持することは難しい状況です。
さらに深刻なのは、iCAR 03の苦戦が例外ではないという点です。奇瑞ブランド全体が、複数のラインで戦いながらも、ポジショニングが混乱している傾向が見受けられます。瑞虎、艾瑞泽、風雲、そしてOmoda、探索06に至るまで、異なるスタイルの5種類の新エネ車が存在し、製品名もマーケティング戦略も一貫性を欠き、消費者にとっては混乱を招いています。ブランドとしての明確な軸や認知度に欠けていると言わざるを得ません。
総じて申し上げますと、iCARは「海外では意欲的展開、国内では苦戦している」状態にあると言えます。一方では、国際市場での展開は明確で将来性が期待されますが、他方では、中国という複雑な市場と消費者の本音に対しては、経験不足と方向性の曖昧さが目立っています。このままでは、奇瑞が製品戦略、市場理解、ブランド運営の面でより成熟した調整を行わない限り、国内での弱点と不安が、海外での成功の足を引っ張る可能性も否めない状況です。