Geely、ルノー・ブラジルの株式26.4%取得――生産・販売協業で南米EV市場を開拓

11月3日、ルノー・グループと中国のGeely(吉利ホールディンググループ)は、ブラジル事業をめぐる最終契約を正式に締結したと発表しました。
今回の合意により、Geelyはルノー・ブラジル社(Renault do Brasil)の株式26.4%を取得し、少数株主として参画します。一方、ルノーは引き続き過半の株式を保有し、同社を連結子会社として維持します。両社は生産、技術、販売など幅広い分野で連携を深め、ブラジル市場での現地生産と販売体制を強化していく方針です。
Geelyは今後、ブラジル南部パラナ州サンジョゼ・ドス・ピニャイスにあるルノーの「Ayrton Senna工業団地」で電動車の現地生産を行う予定です。この工場ではルノーとGeely両ブランドの車両を組み立てることで、生産能力と稼働効率を高め、南米市場での競争力を一段と強化します。
すでにGeelyの電動SUV「EX5」は、ルノーの販売網を通じた専売店舗でブラジル市場への投入が始まっており、今後も同ネットワークを活用して複数のEVモデルを展開していく見通しです。
両社の協業は単なる生産拠点の共有にとどまりません。ルノーはGeelyが開発した次世代EVプラットフォーム「GEA」アーキテクチャを活用し、ブラジル市場におけるゼロエミッション車や低排出車のラインアップ拡充を図ります。一方で、ルノー・ブラジルはGeelyの電動車を同国で販売し、販売金融やアフターサービスなどの領域でも新たな成長機会を模索します。
Geely側は「今回の提携は、双方が持つ強みを活かしながら電動化時代の変革に対応するものです。ルノーは中国発の先進的な電動化技術を導入できる一方、Geelyはルノーの成熟した販売ネットワークを活用して販路拡大を図る構図です」と説明しています。
ブラジルはラテンアメリカ最大の自動車市場です。ブラジル全国自動車工業会(ANFAVEA)によると、2024年の新車販売台数は前年比14.1%増の263万台を記録し、ラテンアメリカ全体の約4割を占めました。旺盛な需要とEV普及の加速を背景に、同国は中国メーカーにとって戦略的拠点としての重要性を増しています。
近年、BYDやChery(奇瑞)などの中国メーカーも相次いでブラジルに生産拠点を設けており、今年10月にはルラ大統領がBYD工場のラインオフ式に出席したことも話題となりました。
今回の出資と提携について、中国の業界関係者は「急速に再編が進む世界のEV市場において、中仏両社が互いの強みを補完し合うことで新たな拠点を築いたことは、他の中国メーカーにとっても有力なモデルケースとなる」と分析しています。