ホンダ、水素戦略を中国で加速──東風と商用車実証運行をスタート

10月22日、本田技研工業(中国)投資有限公司(以下「ホンダ中国」)と東風汽車集団股份有限公司(以下「東風」)は、中国で燃料電池商用車の社会実証運行を正式に開始しました。両社の合弁会社である武漢東本儲運有限公司(以下「東本儲運」)が、まず武漢市の既存物流ルートで運行を始め、今後は広州や上海などにも展開していく予定です。
今回の実証事業は、水素燃料電池技術が中国の物流・輸送環境にどの程度適応できるかを検証することを目的としています。車両の運行データやコストを詳細に把握し、市場での競争力やユーザーの受容度を評価するほか、実際の運行現場から運用効率や付加価値を分析する計画です。実証車両には、東風股份が新世代の軽トラックプラットフォームを基に開発した「東風キャプトEV400」燃料電池トラックが使用されており、ホンダ製の最新燃料電池システムを搭載しています。
ホンダ中国と東風は2023年以降、共同で燃料電池システムの車両搭載および技術検証を進めており、さまざまな道路環境や気候条件下で動力性能、エネルギー効率、耐久性などをテストしてきました。その結果、ホンダの燃料電池システムは応答性や信頼性、エネルギー効率のいずれにおいても優れており、中国市場で求められる商用車の高い稼働要求を十分に満たすことが確認されたとしています。
東風物流集団の総経理であり、東本儲運の副董事長を務める張国良氏は、「すでに専門チームを編成し、安全運行を支える体制を整えました。今後はこの基盤の上で、水素をはじめとするクリーンエネルギー技術の普及を進め、グリーン輸送・スマート配車・資源循環を柱とする新しい物流モデルを構築していきます」と述べています。
一方で、水素燃料電池技術は依然として高コストや関連インフラ整備の遅れといった課題を抱えています。ホンダは日本・栃木県で建設中の燃料電池モジュール工場について、生産開始時期の延期と初期生産能力の縮小を決定しました。しかし、同社は引き続き水素を「将来の重要事業」と位置づけており、燃料電池自動車、商用車、定置型発電設備、建設機械の4分野での応用を推進していく方針です。2050年までに企業全体のカーボンニュートラル達成を目指す考えを示しています。