ネクスペリア問題の影響長期化――ホンダ、日中両国で生産停止 自動車用半導体不足が再燃

ホンダはこのほど、ネクスペリア(Nexperia)に関連する半導体の供給が滞っている影響により、2025年12月下旬から2026年1月初旬にかけて、日本および中国の一部完成車工場で生産を停止、または減産すると明らかにしました。ネクスペリアを巡る地政学的要因とサプライチェーンの混乱が、依然として主要自動車メーカーの事業に実質的な影響を及ぼしていることを示しています。

ホンダによりますと、日本国内の工場では2026年1月5日と6日の2日間、生産を停止し、その後も数日間は当初計画を下回る水準での操業が続く見通しです。対象となる工場名は公表されていませんが、市場では埼玉工場や鈴鹿工場が含まれる可能性があるとみられています。

中国では、広汽集団(GAC)との合弁会社である広汽ホンダの完成車工場3拠点が、2025年12月29日から2026年1月2日まで操業を停止する予定です。ホンダは、この生産調整は東風ホンダの工場には影響しないと説明しています。

ホンダはこれまで、半導体不足の影響を受けた生産能力について、11月下旬以降は段階的に正常化するとの見通しを示していました。しかし、今回の生産調整により、供給網のボトルネックが依然として解消されていないことが浮き彫りとなりました。発表を受け、東京証券取引所ではホンダの株価が一時2%を超えて下落しました。

主要自動車メーカーの中でも、ホンダが受ける影響はとりわけ大きいとみられています。同社は、ネクスペリアからの供給制約を背景に、2025年度の世界販売台数見通しを、従来の362万台から334万台へと引き下げました。

中でも影響が顕著なのが北米市場です。ホンダはすでに、メキシコ、米国、カナダの一部工場で減産や一時的な生産停止を実施してきました。メキシコ工場では主にSUV「HR-V」を生産しており、年産能力は約20万台と、米国向け輸出の重要な拠点となっています。

北米は長年にわたり、ホンダにとって最大級の収益基盤の一つです。2023年度および2024年度の北米販売台数はいずれも160万台を超え、世界販売全体の40%以上を占めました。それでもホンダは、2025年度下期(2025年10月~2026年3月)の世界販売台数が、前年同期比14%減の166万台に落ち込むと見込んでいます。

この予測が現実となれば、ホンダは下期ベースで日本の自動車メーカーによる世界販売台数ランキングの上位3社から外れる可能性があります。長年、トヨタ、ホンダ、日産の3社が上位を占めてきましたが、ホンダはこれまで一貫して2位を維持してきました。

収益面でも影響は避けられません。ホンダは、通期の営業利益見通しを7,000億円から5,500億円へと下方修正しており、半導体不足による生産未達が、さらに約1,500億円規模で営業利益を押し下げると見ています。

自動車産業では、「一つの部品が欠けただけで生産ライン全体が止まる」という構造的な特性があります。今回のように、特定の車載規格品番、特定のパッケージ、特定の出荷ルートに限定された供給中断であっても、その影響は一気に完成車生産へと波及します。

業界関係者によると、市場に一部のMCUやアナログ半導体の在庫が存在していたとしても、実際に不足しているのがすでにAEC-Q認証を取得した特定の車載用チップであれば、短期間での代替は困難です。車載半導体の切り替えには、機能安全や信頼性に関する再検証が必要となるため、サプライチェーンの調整にはどうしても長い時間を要します。

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