ボルボ、中国で大規模リストラ──上海開発拠点に打撃、EV戦略の後退も

7月初め、ボルボの中国法人が大規模な人員削減を開始し、上海・嘉定にある技術開発センターやサプライチェーン部門などの重要部署が大きな影響を受けました。複数の社員によると、今回の解雇通知は6月30日に出され、7月2日までに面談や手続きがほぼ完了するという非常に迅速なスケジュールで進行したとのことです。退職金は「N+3」(Nは勤続年数)とされており、中国の労働法が定める「N+1」よりも手厚く、企業として一定の配慮が見られます。

この人員削減は、ボルボが以前発表した世界規模の組織再編戦略の一環です。今年4月、ボルボは世界全体でホワイトカラー職を約3000人削減すると発表しました。これは全体の約15%に相当し、世界的な販売不振、EV化に伴うコストの増加、関税圧力の高まりといった課題への対応策とされています。この構造改革により、約15億スウェーデンクローナの再編コストが見込まれており、2026年までの完了を予定しています。

今回の削減対象が主に技術職に集中していることは、中国法人内で一部のEVプロジェクトが中止または縮小された可能性を示唆しています。社内関係者によれば、上海の開発センターでは電動化関連のプロジェクトが全面的に「打ち切られた」状態で、技術系職種は「壊滅的」とも言える状況にあるとのことです。一部では70%以上の人員が削減された部署もあり、サプライチェーン部門やエンジニア部門も例外ではありませんでした。

こうしたリストラの背景には、中国市場における販売不振があります。2024年の年間販売台数は15.64万台で前年比8%減少し、2025年第1四半期にはさらに前年比12%の落ち込みとなりました。このような厳しい市場環境が、企業にコスト削減と人件費圧縮を迫った格好です。ある社員は「売れないのに、こんなに人がいても意味がない」と率直に語っています。

ここ数年、中国の自動車市場では競争が激化しており、とくにNEV(新エネルギー車)分野では熾烈な価格競争が展開されています。外資系ブランドも例外ではなく、ボルボはXC40、XC90、S90など複数のモデルで相次いで値下げを実施。新型車の発売価格が旧型よりも7万〜16万元(約150〜350万円)安く設定されるケースも見られました。しかし、「値下げによるシェア争い」ではブランド競争力の本質的な回復にはつながらないとの指摘もあります。社内では「新型車の進化が乏しく、中国市場の急速な変化に追いつけていない」という声も上がっています。

さらに注目すべき点は、ボルボ自体の戦略が大きく転換していることです。昨年9月、同社は2030年までに全車種をEV化するという従来の目標を撤回し、「EV比率90%」というより現実的な方針に切り替えました。今年に入ってからは、新たなハイブリッド構造「SMA(スーパー・マルチ・アーキテクチャ)」を発表し、第1弾モデルとして新型「XC70」を投入。あわせて、SPA2(電動プラットフォーム)とCMA(ガソリン車プラットフォーム)の開発も継続しており、EV・ハイブリッド・ガソリンの3路線で突破口を探る構えです。

グローバルな視点から見ても、今回のボルボのリストラは特別な事例ではありません。フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、フォード、日産といった大手完成車メーカーのみならず、ボッシュやシェフラーといったサプライヤー企業も大規模な人員整理に踏み切っています。サプライチェーンの上流から完成車生産に至るまで、「コスト削減と構造転換の加速」は自動車業界全体の大きなテーマとなっています。

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