売れているBYD、誰が買っているのか
最近、地場メーカーのBYDは、メディア露出度においても、ユーザー認知度においても、最高の人気を誇っている。人気が上昇しているのは、各社が苦戦しているなかで、同社がテスラと並んで供給が追い付かないほど「爆売り」していることからからである。
一部のメディアが取り上げた新車保険加入データを見ると、5月の国内の純電気自動車(除「微型」)販売台数トップ5とPHEV系の販売台数トップ5のうち、BYDはそれぞれ4つの車種がランクインしている。
また今年1―5月累計を見ても、BYDは新エネ車を中心に50万台を超える成績で国内新エネ車一位の座を獲得した。うちわけでは、EVとPHEVの販売台数はそれぞれ25.3万台、25万台で、ほぼ5対5の割合を示しているが、昨年はほぼ7対3の構成で、PHEVの躍進、即ちPHEVの寄与が顕著であることがわかる。
一般的な新エネ車メーカーと異なり、BYDはEVとPHEVの2つの製品ラインを用意しており、EVを用いて新エネ車市場を開拓しつつ、PHEVでガソリン車ユーザーの代替需要を狙っている。
科学技術情報サイトのtmtpost.comの調べによると、BYDのユーザーは大きく2種類に分けられる。
最も多いのは、実用性や経済性を追求し、派手な知能化機能には無関心な層である。記者は10人以上のBYDの異なる車種の所有者に接触し、彼らになぜBYDを購入したかを尋ねたところ、最も多い回答は「安い」「燃費がいい」「乗りやすい」で、「スマート化」と答える人はいなかった。彼らの目には、BYDは経済的な車で、ただそれだけである。
あるBYD「漢DM」ユーザーによると、これまで彼はBuickに乗っていたが、100㎞平均燃費は7リットル以上、道路状況により10リットルまで燃費がかかった時も少なくなかったが、今は、市街地で100㎞平均燃費は約5‐6リットル、高速では5リットルくらいと語った。
最近92号ガソリンの価格は10元以上に値上がりしており、一向に下がる気配がないことから、多くのガソリン車ユーザーはBYDのPHEVに目を向け始めている。
「15万元の秦PLUS DMiは、ガソリン車と同じように航続の不安がなく、燃費が良くてお金がかからない。これは20万元以上のテスラModel 3よりもおいしいのではないか。テスラのいわゆる自動運転機能は、私には必要ない」とある「秦PLUS DMi」のユーザーが取材に答えた。
もう1つは、いわゆる「国産贔屓」のユーザー層である。
彼らは、他社に比べてスマート化で著しい遅れているにも関わらず、今のBYDは、自動車業界のファーウェイに似ていると考えている。
あるBYD「唐」のユーザーは記者に対し、「国産を支持している。BYD『唐』の仲間の間で、基本的に『唐』に乗ってファーウェイを使っている。『迪粉』(BYDファン)と『花粉』(ファーウェイファン)はかなり重なっている。私自身も国内企業の技術にお金を払いたいと思っている」とアピールした。
このような「BYDファン」は、特に南の都市に集中している。保険加入データによると、BYDの本社がある深セン市は、販売台数が1位で、他の都市を大幅に引き離し、仏山市は2位となった。一方、広東省1省での販売台数は、BYDの全国販売台数の2割以上を占めている。
順風満帆のようにみえるBYDだが、今年に入って火災事故が頻発して、大きな波紋を呼んだ。ネット上で投稿された情報を見ても、BYDの新エネ車の火災事故は、1月に2件、2月に4件、3月に5件、4月に8件、5月に16件と急激に増加している。
危機感を抱いたBYDは4月に特に問題の多い車種「唐」についてリコールを実施したが、非対象車もディーラーで点検をうけることを推奨し、1台につき300-400元の手当てを来店のユーザーに支給するキャンペーンを行った。多くのユーザーは手当てをもらうためにディーラーに殺到したという。