EV時代の逆風、中国アフターマーケットが崩壊寸前──ディーラーも整備工場も生き残りの瀬戸際に

2025年、中国の自動車アフターマーケットは構造的な危機に直面し、その影響が全面的に顕在化しています。従来型の4Sディーラーから独立系の整備工場、カーケア店舗に至るまで、すべてが同じ寒波の中で生き残りをかけた苦しい戦いを強いられています。

自動車アフターマーケットに吹き荒れる寒風

10月11日、自動車アフターマーケットプラットフォーム「AC汽車」が発表した最新調査が注目を集めました。調査によると、2025年に入ってからディーラーの約半数が赤字に転落し、独立系アフターサービス店舗の8割以上で売上・利益がともに減少しています。全国に約40万軒ある整備工場のうち、約3割が廃業や業種転換を検討しているとのことです。

EV(新エネルギー車)の急速な普及、価格競争の常態化、人材不足、顧客流出などが重なり、産業全体がかつてない重圧にさらされています。

ディーラーの「アフター反攻」も止まらぬ赤字の波

2024年にはディーラーの約半数が年間販売目標を達成し、前年(27.3%)を大きく上回りました。特に高級ブランドは、合資系や自主ブランドに比べて健闘しました。これは、新政策による需要喚起や、メーカーによる補助金・販売目標の緩和・インセンティブ策などが功を奏したためです。

しかしその一方で、2024年にネットワークを離脱したディーラーは4419店舗に上り、4S店全体の市場環境は厳しい状況にあります。

2025年上半期には、販売目標を達成できたディーラーは全体の3割にとどまり、前年同期比で18ポイント減少しました。経営環境はさらに悪化しています。

2022年から2024年にかけて、ディーラーの黒字率は年々低下し、2025年上半期には52.6%が赤字に転落しました。価格競争の激化で新車販売の利益率は急落し、ディーラーはアフター部門への注力度を高め、収益構造は「新車からアフターへ」と急速にシフトしています。金融・保険・整備などの付帯サービスが相対的に増加しているのが特徴です。

こ新車販売の赤字を補うため、多くのディーラーは工場スペースの貸し出しや、他ブランド車の整備受け入れなどによってコスト分散を図っています。こうした動きは同時に独立系アフターサービスの市場を圧迫しています。

独立系整備店、「二方向からの挟み撃ち」に苦しむ

独立系整備店にとって、2025年前半はまさに「生き残りを賭けた試練」の時期となりました。AC汽車の調査によると、8割以上の店舗で売上・利益ともに減少しています。主な要因は、既存顧客の新車(特にEV)への買い替えによる流出に加え、4S店および新メディアによる価格競争・集客圧力の高まりです。

4S店はアフター事業への投資を強化し、新メディアは補助金や団体購入、割引パッケージなどで顧客を引きつけています。価格に敏感な顧客ほど短期的な割引に惹かれ、独立店の来店機会は減少。オンライン予約からオフライン整備へという流れが定着し、従来の集客経路は大きく変わりつつあります。

ショート動画SNSによる「アクセスの黄金期」が過ぎ去った今、多くの店舗は「広告投下を止めれば集客が途絶える」というジレンマに陥っています。大半の個人店舗は月間マーケティング予算を3000元以内に抑えており、投資対効果(ROI)は低迷しています。

同時に、業界では深刻な技術者不足が進行中です。EV整備技術者の不足は82万人に達し、離職率は70%を超えています。技術進化のスピードに教育・研修体制が追いつかず、「仕事はあるのに人がいない」という状況が蔓延。中堅技術者の多くは「ガソリン車は直せるがEVは分からない」という焦燥感を抱えています。

全国40万の整備工場のうち、3割が廃業の危機

AC汽車の調査によれば、全国約40万軒の整備工場のうち、約3割が閉業や転業を検討しています。

鄭州や合肥などの都市では、「整備街」にシャッターが並び、看板が色あせ、テナント募集の貼り紙が目立つようになりました。

20年のキャリアを持つある整備工場の経営者は、「去年仕入れたフィルターが倉庫を埋め尽くしている。3割値下げしても売れない」と苦笑します。EV部品の高い技術的ハードルを前に「やる気はあるがついていけない」と語ります。年齢、学習、転換コストの壁が、数多くのベテラン整備士を苦しめています。

38歳の賈さんは修理歴20年。今は親戚の工場で技術責任者を務めていますが、月給6000元では住宅ローンと生活費で手一杯。「好きな仕事でも、もう貯金はできない」と漏らします。

かつて鄭州のディーラーに勤めていた朱店長も、結婚と住宅購入を機に業界を離れ、現在は電力会社で安定した職を得ています。「整備の仕事は好きだけど、好きだけでは家族を養えない」と語りました。

彼らの姿は、アフターマーケット労働構造の動揺を象徴しています。ベテランは疲弊し、若者は参入を避けています。調査によれば、業界従事者の8割が80~90年代生まれで、2000年以降生まれの人材はごく少数です。

多くの整備士が電力業や物流業へ転職し、残る者は家賃高騰と利益縮小の板挟みで苦しんでいます。「生き残れたら、それだけで勝ちだ」が、いまや業界共通の合言葉になっています。

カーケア店舗の「意外な転機」

比較的明るい兆しを見せているのが、カーコーティングやフィルム施工などの自動車美容業です。AC汽車のデータによると、約6割のカーラッピング専門店が売上横ばいまたは成長を維持しており、市場の底堅さがうかがえます。

ただし、価格競争は依然として続いており、主流のベーシックフィルム施工価格は前年の6000元から4000元前後まで下がっています。

販路面では、依然として店舗での対面販売が主流ですが、オンライン経由の集客比率が年々上昇しています。メーカー本部によるライブ配信や多チャネル展開が、店舗運営のあり方を変えつつあります。

結語

厳しい現実と暗い見通しにもかかわらず、AC汽車は他の中国メディアと同様に、前向きな見方を示しています。同社は「この危機は終わりではなく、『再構築』の始まりだ」と指摘します。EV普及の加速、直販モデルの拡大、デジタルサービスの進化――こうした動きが、伝統的店舗の変革を強く促しています。

AC汽車は今後の業界像として、「自然流入型」から「多元駆動型」への転換を予測しています。顧客マネジメント、オンラインとオフラインの融合、ブランド化・専門化が競争の核心になるとし、旧来の発想を打ち破り、変化を受け入れた者だけが、新たな自動車サービスの生態系で生き残ることができると結んでいます。

78

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。