中国自動車業界、価格競争収まらず 政府の「内巻」抑制策は効果薄

中国自動車業界は、かつてない「内巻(過当競争)」に陥っています。政府は繰り返し価格競争に「ブレーキをかける」と表明していますが、市場データによれば、値下げの動きは依然として収まっていません。
5月末に中国自動車工業協会(CAAM)が値下げ反対と秩序維持を呼びかけ、7月の国務院常務会議でもコスト調査や価格監視の強化、企業の支払期日管理が打ち出されました。国家の姿勢は明確ですが、7月の市場全体では値下げの勢いに大きな変化は見られず、わずかな緩和にとどまりました。
ブルームバーグは8月27日付記事「Chinese Carmakers Resist Beijing’s Call to End Brutal Price War(中国自動車メーカー、政府の価格競争終結要請に抵抗)」において、中国主要20ブランドの多くが7月に値引きを維持、あるいは拡大したと報じました。記事は「政府の抑制策は効果が薄く、7月の販売促進策は前年同月を上回った」と指摘しています。
引用されたデータによれば、6月に政府が「激しい競争を避けるよう」呼びかけたにもかかわらず、依然として7ブランドが値引きを拡大しました。他のブランドも値引きを維持、または小幅な縮小にとどまりました。背景には過剰生産能力や消費者信頼感の低迷があるとされています。
乗連会(全国乗用車市場情報連席会)の統計も同様の傾向を示しています。2025年7月には17車種が値下げされ、2〜3月や前年同期よりは少ないものの、4〜6月を上回りました。その内訳はガソリン車7車種(前月比+2)、純電動車7車種(前月比+1)、プラグインハイブリッド2車種、レンジエクステンダー1車種です。
価格競争は業界全体の収益を直撃しています。乗連会のデータによると、2025年7月の自動車業界売上高は8275億元(前年比+5%)、利益は293億元(前年比-17%)に落ち込み、販売利益率は3.5%と近年の最低水準となりました。今年1~7月の累計でも利益率は4.6%にとどまり、工業企業全体の5.9%やトヨタの同期9.5%に比べ大きく見劣りします。
販売チャネルの疲弊も深刻です。流通分野の統計によれば、2025年上半期だけで1200以上の4S店が閉鎖寸前に追い込まれ、販売目標を達成できたのは全体の27.5%に過ぎません。2024年には全国で4400超の店舗が退場し、毎日平均12店舗が消えた計算になります。
サプライヤーからも不満が噴出しています。政府が「60日以内の支払い」を義務づけているにもかかわらず、多くの企業が抜け道を使い、支払い遅延が常態化しています。
一方、全体的な価格競争の中で、意外にもガソリン車が一部メーカーの利益支柱となっています。合弁や高級ブランドはブランド価値の維持や金融調整の影響もあり、7月の平均販売価格が上昇しました。
もっとも、政府や業界団体が「反内巻」(過当競争反対)を訴えても、具体的な実行策に乏しく、実効性は低いのが現状です。経済減速と消費者信頼感の低迷が続く中、メーカーは生き残りのために値下げに依存せざるを得ないのが実情です。このため、中国自動車市場の価格競争は今後も続く可能性が高いと考えられます。