中国車の海外進出、成長は一時減速も2030年にシェア15~20%へ――グローバル化「後半戦」の焦点は現地化

12月19日、華汽汽車文化基金会傘下の自動車産業シンクタンクである華汽研究院は、ロラン・ベルガーと共同で「中国自動車産業グローバル化レポート2025――自動車サプライチェーンに焦点」と題する調査報告書(以下、本レポート)を公表しました。本レポートでは、2030年までに中国自動車メーカーの海外販売台数が750万~1,000万台に達し、世界市場におけるシェアは15~20%に拡大する可能性があると予測しています。

一方で、海外在庫の調整や現地での研究開発、工場建設に要する期間などを背景に、今後2年ほどは海外販売の伸びが一時的に鈍化する可能性があるとしています。2026~2027年にかけて海外展開を本格的に拡大していくには、なお1~3年程度の時間を要するとの見方も示されています。
本レポートは、これまで自動車産業が三度の典型的なグローバル化ウインドウを経験してきたと指摘しています。1910~1920年代の米系メーカーの世界進出、1970~1980年代の日本・韓国メーカーの台頭、そして2000~2010年代の独系メーカーによるグローバル展開です。2020~2030年代にあたる今回の新たなウインドウ期においては、コネクテッド技術や新エネルギー分野が、中国自動車産業にとって希少な飛躍の機会をもたらしています。

実際、こうした見立てはデータによって裏付けられつつあります。過去5年間で中国ブランドの海外販売比率は急速に上昇し、全体として米系・韓国系メーカーとほぼ肩を並べる水準に達しました。現在では、中国、米国、欧州、日本、韓国の「五強」が並走する競争構図が形成されています。

ロラン・ベルガーのグローバル・シニア・パートナーであり、アジア太平洋地域の自動車事業責任者を務める鄭赟氏は、中国車メーカーの輸出成長は、従来市場の自然拡大だけによるものではないと指摘します。より重要なのは、新エネルギー車や知能化への転換において中国が先行者優位性を発揮してきたこと、そしてそれに伴うブランド力の向上だとしています。

本レポートはまた、世界の自動車市場が明確な階層構造を持っている点を強調しています。中国、米国、欧州といった年間販売台数が1,000万台を超える大規模市場において、メーカー間の海外シェアの差を決定づける要因は、製品力や価格そのものではなく、現地化の深さにあると分析しています。

この観点から、欧州市場は中国車メーカーにとってグローバル展開を次の段階へ引き上げるための「避けて通れない戦場」と位置づけられています。EU市場に確固たる拠点を築けなければ、中国メーカーが世界第2グループへと進むことは難しいとされています。これに対し、米系メーカーは北米で圧倒的な優位性を持ち、日本メーカーは中国を含むアジア地域および欧州で相対的な強みを維持しています。

鄭氏は、欧州攻略は単なる販売拡大ではなく、研究開発、生産、調達、サービスに至るまで、バリューチェーン全体にわたる高度な現地化を意味すると指摘します。中国の自動車産業は、「国内生産+海外販売」から、「グローバルな資源配分+現地運営」へと移行し、持続可能なコスト競争力とブランド認知を構築する段階に入らなければならないとしています。

海外における現地化率を見ると、中国ブランドは依然として他の主要メーカーとの間に明確な差があります。データによれば、日本系・欧州系メーカーの海外現地化率は概ね80%を超え、韓国系も着実に上昇している一方で、中国メーカー全体は依然として第3グループにとどまっています。

このギャップは、中国がすでに世界有数の自動車生産・輸出大国となっている現状と必ずしも整合していません。本レポートは、部品供給を中核とするサプライチェーンの現地化を加速させることが、中国自動車産業が次のグローバル化段階へ進むための重要な突破口になると指摘しています。

グローバル展開の過程において、自動車産業はおおむね四つの段階を経るとされています。完成車輸出を中心とする貿易段階、KD組立段階、本格的な現地生産段階、そしてグローバル一体運営段階です。現在、中国の自動車産業は第2段階から第3段階を経て、より高度な段階へと移行しつつありますが、制度設計や連携能力の面ではなお課題が残っています。

部品メーカーは、中国自動車産業のグローバル化を支える「インフラ」とも言える存在です。2020年以降、中国の部品メーカーの海外事業は大きく成長し、新エネルギーおよび知能化関連部品が主な成長エンジンとなっています。2024年には、中国の自動車部品輸出額は6,700億元を超え、海外での現地供給額は約2,500億元に達しました。すでに300カ所以上の海外工場が稼働しており、さらに多くの新設計画が進んでいます。

ただし、低コスト労働力に依存し、純輸出による代替を進めてきた従来のモデルとは異なり、現在の部品メーカーの海外展開では、技術力、効率性、完成車メーカーとの協調が重視されています。その一方で、収益性は依然として大きな課題です。ロラン・ベルガーが53社の経営幹部を対象に行った調査では、半数を超える企業が海外事業で損益分岐点か赤字の状態にあり、今後2年間で収益が大きく改善すると見込む企業は限られています。

調査ではさらに、部品メーカーの海外展開が直面する共通の課題として、戦略の不明確さ、グローバル運営体制の不整合、組織およびガバナンス能力の不足など、10項目が整理されています。

こうした分析を踏まえ、本レポートは、中国の自動車メーカーおよび部品メーカーに対し、グローバル化の後半戦では「戦略を先行させ、仕組みを固め、事業を見極める」という三層の原則に従うべきだと提言しています。戦略レベルでは市場と進出ルートを明確にし、事業レベルでは顧客と製品を正しく選び、仕組みの面では組織、人材、運営能力の強化を急ぐ必要があるとしています。

グローバル化のウインドウが徐々に狭まるなかで、中国の自動車産業は「海外に出られるかどうか」から、「海外で持続的に根を張れるかどうか」へと問いが変わりつつあります。深度ある現地化こそが、このグローバル競争の行方を左右する最大の鍵となっています。

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