中国自動車、ベネズエラで存在感を拡大――市場シェアは過半に迫る一方、先行きには不透明感

ここ数日のベネズエラ情勢がなければ、南米北端に位置するこの国が、中国の自動車輸出やブランド戦略と結び付けて語られることは、ほとんどなかったかもしれません。

しかし、最新の統計データを見ていくと、ベネズエラが近年、中国自動車の存在感が急速に高まっている市場の一つであることが浮かび上がってきます。2025年1~11月の中国からベネズエラへの自動車輸出台数は1万7,099台に達し、前年同期比で130%増となりました。内訳を見ると、乗用車が1万201台(同166%増)、トラックが1,481台(同99%増)で、バスや特殊車両も合わせて400台以上が輸出されています。

中国全体の自動車輸出が年間数百万台規模に達していることを踏まえれば、ベネズエラ向けの数量自体は決して大きいとは言えません。ただし、現地市場の規模を考慮すると、その影響力はすでに無視できない水準に達しています。

ベネズエラの人口は3,000万人に満たず、自動車市場の規模は中国の大都市である重慶市と同程度にすぎません。政治・経済の不安定さから、かつては「投資が難しい市場」と見なされてきましたが、近年は中国メーカーの車両が急速に流入しています。

ベネズエラ自動車商会(CAVENEZ)のデータによると、2024年の新車販売台数では、トヨタが7,114台で首位に立ち、中国メーカーのJAC(江淮汽車)が4,814台で2位、長安汽車が3位となりました。ところが、2025年に入ると市場構造に変化が見られます。1~11月の累計販売台数では、JACがトヨタを上回り、年間販売首位をほぼ確実なものとしました。

JACの急成長の背景には、現地組立の推進と積極的な価格戦略があります。同社は2024年からCKD方式で部品を輸出し、ベネズエラ国内での最終組立を開始しました。これと並行して販売網の拡充を進め、2025年後半には販促キャンペーンの実施や新型車の投入を重ねたことで、月間販売台数が大きく伸びました。

JACに加え、長安や福田といった中国ブランドも、2025年にはここ数年で最も好調な販売実績を記録しています。これら3社だけで、2025年1~11月の市場シェアは合計で約49%に達しました。さらに、Chery(奇瑞)、GWM(長城汽車)、MG(SAIC傘下のサブブランド)などのブランドも現地で販売を行っていますが、これらはCAVENEZの統計には含まれていません。こうした点を踏まえると、中国ブランド全体の市場シェアは2025年に50%を超え、販売台数も2万台を上回った可能性があります。

こうした動きを後押しした要因の一つが、政策面での支援です。ベネズエラ政府は2025年10月、登録済みの自動車組立企業や部品メーカーを対象に、12カ月間にわたり自動車部品の輸入関税を免除すると発表しました。

それ以前、ベネズエラの自動車製造はほぼ停止状態にありました。2022年と2023年の新車販売台数は、それぞれ約8,300台、7,313台だった一方、国内の自動車生産台数は数十台にとどまっていました。しかし、中国メーカーが現地組立を再開したことで、2024年の自動車生産台数は4,384台まで回復し、販売全体の約4分の1を占めるようになりました。2025年に入ってからも組立台数は増加していますが、部品供給は依然として輸入への依存度が高い状況です。

関税免除によって新車価格が引き下げられる余地が生まれたことで、短期的には需要の拡大と組立規模の増加が同時に進みました。この点は、中国ブランドが市場シェアを拡大するうえで追い風となりました。

もっとも、2026年に入ると状況が一変する可能性もあります。米国によるマドゥロ政権への対応をきっかけに、政治・治安面の不確実性が再び高まっているためです。輸入部品への依存度が高く、金融基盤も脆弱で、市場規模自体が小さいベネズエラの自動車産業にとって、こうした不安定要因は直接的な打撃となりかねません。中国自動車メーカーにとっても、同国市場への継続的な進出をめぐって、新たな不透明感が漂い始めています。

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