ガソリン車、予想外の復活──4か月連続で販売増 値下げと補助金が後押し

中国の自動車市場では、BEVやPHEVなどの新エネルギー車の存在感が高まる一方で、伝統的なガソリン車が予想外の回復を見せています。中国汽車工業協会(CAAM)の最新統計によりますと、2025年9月の国内乗用車販売台数は229万9,000台で、前年同月比11.2%増となりました。そのうちガソリン車は100万台を占め、前年同月比6.4%増、前月比10.9%増と、4か月連続で前年実績を上回っています。

販売が底打ち、ガソリン車メーカーは再び市場ポジションを模索

長期的な落ち込みと調整期を経て、ガソリン車市場は価格と商品ポジションの再構築を進めています。自動車アナリストの張炤虎氏は次のように分析しています。

「ガソリン車の価格は過去最低水準まで下がり、価格に敏感な消費者の需要を取り込んでいます。一方で、新エネルギー車(NEV)の普及率が50%を超えたことで成長が一服し、その一部をガソリン車が補う形になっています。」

CAAMによりますと、今年1〜9月のガソリン車累計販売(卸売ベース)は814万1,000台で、前年同期比1.7%増となりました。2024年には17.7%減だったことを考えると、明確な反転が見て取れます。また、全国乗用車市場情報連席会(乗聯会)のデータによると、同期間のガソリン車小売販売は前年同期比4%減にとどまり、2024年の14%減から大幅に改善しています。

政策支援と値引き競争が回復を後押し

今回の回復の背景には、政府の支援策があります。2025年に拡充された「自動車買い替え支援政策」では、国4(国家Euro 4相当)排出基準が導入された初年度のガソリン車も補助対象に加えられました。2.0L以下のガソリン車を廃車した場合は1万5,000元、乗り換えの場合は最大1万3,000元の補助を受けることができます。

乗聯会の崔東樹事務局長は次のように述べています。「廃車更新と買い替え補助がガソリン車の需要を喚起し、市場の安定につながっています。」

政策支援に加え、販売現場での値引きも大きな要因となっています。乗聯会の調査によりますと、2025年9月のガソリン車の平均割引率は23.9%に達し、10か月連続で22%超を維持しています。これは電気自動車(約10%)を大きく上回る水準です。特に高級車と合弁ブランド車の値引きが顕著で、高級車の平均割引は27.7%、合弁ガソリン車も23.3%に達し(前年は13%)、割引競争が鮮明になっています。

「ガソリン車=非知能化」の印象を払拭、技術面でも進化

ガソリン車が生き残りを図るうえで、もう一つの鍵となっているのが「知能化」です。近年登場したガソリン車や、工業情報化部のカタログ掲載予定車では、運転支援機能やコネクテッド機能、音声操作などが大幅に改善されており、新エネルギー車との技術的な隔たりは急速に縮まっています。

多くのメーカーは依然として「新エネルギー車と内燃機関車の両立」戦略を取っています。たとえばGeely(吉利汽車)は、販売の約半分を占めるガソリン車市場を維持すると明言しています。2025年10月に発売された新車35モデルのうち16モデルがガソリン車で、9月も75モデル中35モデルがガソリン車でした。GWM(長城汽車)も内燃エンジンの開発を継続しています。

電動化の勢いは鈍化も、長期トレンドは不変

ガソリン車の反発が目立つとはいえ、中国市場で電動化の流れが逆転するわけではありません。補助金制度や価格競争、新エネルギー車の一時的な伸び悩みが重なり、短期的な反転を生んだにすぎません。政策の方向性から見ても、中国の電動化シフトは今後も続くとみられます。

実際、2025年9月の新エネルギー乗用車の卸売シェアは53.5%、小売シェアは57.8%と過去最高を記録しています。崔東樹氏は次のように指摘しています。「ガソリン車の『退場論』は時期尚早です。今後数年間はガソリン車と電動車が共存しながら市場を形成していきますが、長期的には『脱ガソリン・電動化』が不可逆的な流れです。」

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