タイ自動車市場での頂点争い:日系ブランドが苦戦、中国ブランドが新エネルギー車で圧勝

タイの自動車市場では、過去数カ月にわたり日中両国の自動車メーカーによる激しい競争が繰り広げられています。この戦いは単なる販売台数の争いにとどまらず、グローバル市場における両国の戦略的駆け引きも含んでいます。各メディアの報道と市場データからは、中国の自動車ブランドが急速に台頭しており、日系ブランドがこれまでの優位性を失いつつある様子が明らかになっています。

日系ブランド:依然として強大だが衰退の兆し

タイ市場では依然として日系ブランドが圧倒的な地位を占めており、2024年上半期には市場シェアの77.2%を確保していますが、これは例年の85-88%から大幅に減少しています。この減少は、中国自動車ブランドの躍進と対照的です。中国ブランドの市場シェアは、2018年の2〜3%から2023年には11.0%に急拡大しており、特に新エネルギー車分野では、中国ブランドがすでに圧倒的な優位を誇っています。

最近、スバルとスズキが相次いでタイ工場の閉鎖を発表し、日系ブランドのタイ市場での衰退が明らかになりつつあります。一方で、中国の自動車ブランドはタイに工場を設置し、生産能力を増強しています。例えば、BYDのラヨーン(Rayong)工場の年間生産能力は15万台に達し、Geely(吉利)、長城、GAC(広汽)などの中国メーカーもタイ市場に積極的に進出しており、その勢いは増すばかりです。

中国ブランドの台頭:新エネルギー車が鍵に

タイ市場での中国自動車ブランドの急成長は、タイの新エネルギー車市場の急速な成長と密接に関連しています。2023年には、タイの新エネルギー車販売台数が前年の2万1千台から8万8千台に急増し、新エネルギー車のシェアも2.4%から10.5%に上昇しました。EV市場では、BYD、SAIC(上汽)MG、長安、GAC傘下のAionなどの中国ブランドがすでに80%以上の市場シェアを占めています。

新エネルギー車に対する消費者の需要と、タイ政府の政策支援が中国自動車ブランドの台頭を後押ししています。タイ政府は2022年から、最大15万バーツ(約3万元)の自動車購入補助金や消費税の減免など、新エネルギー車を奨励する政策を実施しており、これらは特に価格に敏感なタイの消費者にとって、新エネルギー車の普及を大いに促進しました。

今後の課題とチャンス

しかし、中国自動車ブランドの急速な拡大にはいくつかの課題も存在します。新エネルギー車は大都市で人気を集めていますが、充電スタンドなどのインフラ不足が大きな問題です。2023年のタイにおける充電スタンドと新エネルギー車保有の比率は1:18.8で、中国国内の1:2.4と比べて大幅に遅れています。この弱点は、新エネルギー車のさらなる普及に影響を及ぼす可能性があります。

また、タイの新エネルギー車市場に対する政策支援にも不確実性があります。政策の変更により、2024年にはEVのシェアが低下する可能性があります。

結論:タイにおける日中自動車の未来競争

タイ市場の変遷は、日中自動車のグローバル競争の縮図と言えます。日系ブランドは長年にわたる蓄積により、依然として大きな市場シェアを持っていますが、新エネルギー分野での中国ブランドの急速な発展は、その構図を急速に変えつつあります。今後、タイ市場がさらに発展する中で、日中自動車の競争はますます激化し、この頂点対決の最終的な勝者がアジア自動車市場の未来を決定することでしょう。

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