ニッケル価格急騰、新エネルギー車コストはさらに上昇するか
経済誌「第一財経」によると、ウクライナ情勢の緊迫化と対ロシア制裁による供給不安から、ロンドン金属取引所(LME)のニッケル価格が急騰し、それに伴って上海市場のニッケル先物価格も上昇しています。
ニッケルは三元リチウム電池の重要な原材料であり、特に高ニッケル化の技術トレンドの中で、その価格上昇は新エネルギー車業界全体の生産コストに直接影響します。
「第一財経」がある証券会社の試算を引用したところによれば、高ニッケル化と脱コバルト化の流れでニッケルの需要が大幅に増加し、使用量は3系の21.5%から8系の52.2%に上昇しました。ニッケル価格が1トン当たり10万元上昇すると、50kWhの純電気自動車は、三元系正極材NMC5系で2261元、NMC6系で2709元、NMC8系で3605元のコスト増となります。
具体的な車種例では、ニッケル価格が1トン当たり5万ドルの場合、Model 3(76.8kWh)のコストは1.05万元、Xpeng P7(80.87kWh)は1.1万元、NIO(蔚来)EC6(70kWh)は0.95万元上昇します。ニッケル価格が1トン当たり10万ドルになると、これらの車種のコストはそれぞれ2.8万元、約3万元、2.5万元上昇すると試算されています。
ニッケル価格の急騰による新エネルギー車のコスト上昇は最終的に誰が負担するのかについて、動力電池メーカー関係者は、OEMとの契約でセル価格の調整がLMEの相場と連動しているため、ニッケル価格上昇に伴うコスト増は動力電池メーカーではなく、OEMか動力電池の正極メーカーが負担する可能性が高いと述べています。
今回のニッケル価格高騰前から、新エネルギー自動車業界は半導体供給不足やバッテリー供給不足、原材料の値上げ、補助金の後退などにより、コスト面で圧力を受けていました。NIO、理想、Xpengなどのベンチャー系新興自動車メーカーはいずれも赤字で、BAIC傘下の新エネルギーブランド「北汽藍谷」は2021年度に48-53億元の損失を見込んでいます。また、地場メーカーの小康汽車によると、同社傘下の新エネルギー車ブランド「SERES」は約14億元の赤字を計上しました。
「第一財経」によると、今年に入ってから10社の新エネルギーブランドが値上げに踏み切り、値上げ額は1000元から20000元の間となっています。例えば、テスラModel 3の後輪駆動タイプは1万元、吉利傘下の新エネルギー車ブランド「幾何」の「功夫牛」は7000元、Xpeng P7は最高5900元、BYDの各車種も最高7000元の値上げとなりました。
一方で、業界内では今回のニッケル価格の急騰は一時的なものであるとの見方もあります。「第一財経」によると、業界関係者はニッケル価格の急騰は主にパニック心理と先物市場の影響によるものと指摘しています。