HiPhi(高合汽車)の再建計画が停滞 中東からの6億ドル投資が未着金、資金拠出条件で対立

2024年2月に操業停止を発表したHiPhi(高合汽車)は、その後の再建プロセスが注目されてきました。今年5月には新会社「江蘇高合汽車有限公司」が設立され、再始動への兆しと見られていましたが、主要な戦略的投資者であるレバノンのEV Electra社が初回の資金拠出を行っておらず、取引は現在停滞しています。

投資計画の進展に遅れ

公開情報によると、EV Electra社はHiPhiの再建計画に対し、総額6億ドル(約43億元相当)を段階的に投資することを約束していました。具体的には、債権者の51%以上が投資協定の「支持書」に署名した後、1億ドルの手付金を支払い、再建完了時にさらに1億ドル、残りの4億ドルはその後の2年目と3年目に分割して支払うという内容でした。

しかし、同社創業者のジハード・モハメド氏(Jihad Mohammad)は最近のインタビューで、まだ一切の資金を支払っておらず、その理由として、債権者の支持書が自身の求めるフォーマットに合致していないことを挙げました。現在、11社の債権者が支持書に署名しているものの、EV Electra側は「代表者の署名がない」「債権比率が明記されていない」などの問題を指摘しています。

法律専門家によれば、支持書は法的には投資意向を把握するための補助資料に過ぎず、最終的な意思決定は裁判所が主導する再建案の投票によって決定されます。支持書の形式を理由に支払いを停止することが契約違反に該当するかどうかは、今後の法的判断を待つ必要があります。

合弁会社は実質的な運営引き継ぎに至らず

登記情報によると、「江蘇高合汽車有限公司」は5月に設立され、EV Electraが1億ドルを出資し69.8%の株式を保有し、残りはHiPhiの旧製造主体であるHuman Horizons(華人運通(江蘇)技術有限公司)が保有しています。モハメド氏は同社の法定代表者兼董事長に就任しています。

計画では、「江蘇高合汽車有限公司」がHiPhiの既存の生産ラインや無形資産を引き継ぎ、今後の運営を担うとされていました。EV Electraはまた、今後3年間で10万台のHiPhiの車両を海外で販売する契約も約束していました。

しかし、初期投資が未着金であるため、同社の印鑑など実務的な企業統治権の移管も進まず、運営が停滞しています。関係者によると、債権者の一つである「江蘇悦達汽車集団」はすでに支持書に署名しており、HiPhiのアフターサービスも引き続き担っているとのことです。

投資者の背景に注目

EV Electraは、モハメド氏がレバノンで創設した電気自動車メーカーで、2021年に「QuDS Rise」という電動スポーツカーを発表しました。同社は自らを「レバノン初、かつアラブ世界初の電動車メーカー」と称しており、中国においても合弁工場の設立を計画していました。

しかし、同社は過去に暗号資産を用いた資金調達やデザイン盗用疑惑などのスキャンダルでも注目を集めました。モハメド氏はこれらの指摘を繰り返し否定していますが、現在も同社はトークン発行による資金調達を進めている模様です。一部のメディアは、同氏がHiPhiへの投資を後悔しているのではないかと推測しています。

HiPhiはいまだ司法手続き中

HiPhiは2019年に創業された、Human Horizons傘下の高級スマート電動車ブランドであり、創業者の丁磊氏は元・SAIC副総裁です。2024年2月に生産停止を発表した後、同年8月には裁判所主導のプレパッケージ型再建手続き(予備的破産保護)に入りました。

今年4月に裁判所が発表した資料によると、Human Horizonsを含む関連52社の申請債務総額は約228億元に達しています。社員の一部には和解金の支払いが始まっており、塩城工場では2025年4月末に試験車両のラインオフも行われました。生産能力の一部は維持されているものの、再建の鍵を握る資金調達の行方は依然として不透明なままです。

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