イタリアの独占禁止機関である競争管理局（AGCM）は、中国製自動車をDR Automobiles社が詐欺的な商業宣伝行為に利用していたとして、同社とその子会社に600万ユーロの罰金を科しました。

AGCMによると、DR Automobilesは2021年12月以降、中国メーカーのOEM車両をイタリア製と偽って販売していましたが、実際にはイタリアでのわずかな組み立て作業しか行っていませんでした。

2006年にイタリアの実業家で元レーシングドライバーのマッシモ・ディ・リージオ氏（Massimo Di Risio）によって設立されたDR Automobilesは、2007年に中国のChery（奇瑞）と提携し、イタリアでのChery製品の組み立てと販売を開始しました。2020年には同じ中国メーカーのBAIC（北京汽車）の製品をベースにしたEvoサブブランドを立ち上げ、2024年には東風汽車の製品を販売するTigerサブブランドを導入しました。しかし、AGCMの調査により、DR Automobilesが十分な部品供給や適切なアフターサービスを提供していなかったことが明らかになり、DRおよびEVOブランドの車両販売が好調な中で広く注目されました。

業界ではCKD（フルノックダウン）やSKD（セミノックダウン）モデルでの自動車輸出が一般的です。例えば、中国の長城汽車はマレーシアのEP Manufacturing BerhadとのCKD組立提携を完了し、Geely（吉利）はベラルーシにCKD工場を設立しました。これにより、中国の自動車メーカーは輸送や関税コストを削減し、現地の雇用と税収を増やし、貿易障壁のリスクを軽減しています。

AGCMは、DR AutomobilesがChery、JAC（江淮）、BAICなどの中国メーカーの部品を使用してイタリアで経済的な自動車を組み立てていると指摘し、これらの車両が完全にイタリアで生産されているかのように虚偽の宣伝をしていたとしました。2023年にはDR Automobilesはイタリアで2.53万台を販売し、アルファロメオに次ぐ販売台数を記録し、MINIやボルボを上回りました。

今回の処罰により、AGCMは市場に対する警告の役割を果たし、企業に宣伝や販売における透明性と誠実さを促すことを期待しています。同時に、この事件は世界市場における中国製自動車の影響力と複雑なサプライチェーンの関係を浮き彫りにしました。