メキシコ、中国製自動車に最大50%の関税──米国圧力と国内産業保護のはざまで

ロイターやブルームバーグなど複数のメディアによりますと、9月10日、メキシコ政府は中国を含む自由貿易協定を締結していない国からの輸入品に対して、大幅な関税引き上げを行う計画を発表しました。その中で自動車の関税率は最大で50%まで引き上げられる見通しです。現在、メキシコが中国製自動車に課している関税は15%から20%となっており、調整が実施されれば、中国はメキシコ最大の自動車輸入供給国として最も大きな影響を受けることになります。
メキシコ経済省の文書によりますと、新たな関税は主にメキシコと自由貿易協定を結んでいない国を対象としており、中国、韓国、インド、インドネシア、ロシア、タイ、トルコが含まれます。今回の措置はメキシコの輸入の8.6%に影響し、リスクにさらされている32万5,000人の工業・製造業の雇用を保護すると見込まれています。
自動車以外では、新たな措置によって輸入鋼鉄、玩具、オートバイに35%の関税が課され、繊維製品の輸入関税は10%から50%の範囲で変動することになります。
報道によりますと、マルセロ・エブラルド経済相(Marcelo Ebrard)は公開演説で、自動車産業がメキシコ製造業の23%を占めていることを示したうえで、関税引き上げは低価格の輸入車が国内市場に打撃を与えるのを防ぐための措置であると強調しました。同氏は「一定の保護がなければ、メキシコは中国車とほとんど競争できない」と述べています。
一方で、ロイターが伝えた関係者の見方によれば、今回の関税引き上げはアメリカからの圧力に対応するものであり、トランプ政権による貿易上の脅しを和らげる狙いがあるとされています。トランプ政権は最近、メキシコに対して米国にならい、中国からの輸入品に関税を課すよう繰り返し求めていました。
市場面では、中国自動車流通協会(CADA)のデータによると、メキシコはすでにロシアに代わって中国自動車の最大輸出市場となっており、今年上半期の輸出量は前年同期比で約25%増加しました。BYDをはじめとする中国自動車メーカーはメキシコ国内に800を超える販売拠点を設立しており、投資規模は600億ペソ(約32億ドル)を超え、3.2万人以上の雇用を直接創出しています。
中国とメキシコの貿易規模も大きく、2024年の二国間貿易総額は1,094億ドルに達しました。中国からメキシコへの輸出品は電子部品や自動車部品などが中心であり、メキシコから中国への輸出品は原油や電気機器が主力となっています。
この関税案はまだ議会の承認を必要としていますが、大統領シェインバウムの所属政党とその同盟勢力が議会で多数を占めているため、法案は高い確率で可決されると広く見られています。成立した場合は、政府公報に掲載されてから30日後に正式に施行される予定です。