オランダ・ネクスペリア本部、中国製チップ購入控えを勧告──東莞工場は稼働縮小、中蘭協議は依然不透明

中国とオランダの間で続くネクスペリア(Nexperia、中国語名「安世半導体」)の経営権をめぐる対立が激化し、世界の半導体供給網に混乱を引き起こしています。
10月22日、オランダのメディアHet Financieele Dagblad(Fd.nl)は、ネクスペリア本社が顧客に対し「中国工場で製造されたチップの品質を保証できない」と警告し、中国製品の購入を控えるよう勧告したと報じました。関係者によると、ネクスペリアのヨーロッパ側は「中国側の生産工程をもはや管理できない」ことを理由に挙げています。これに先立ち、中国側のネクスペリアはオランダ本社の指示に従わない方針を表明していました。
10月1日にオランダ政府が「ガバナンス上の問題」を理由に、中国の聞泰科技(Wingtech Technology)傘下のネクスペリアを接収したことが発端です。これに対し、10月4日には中国商務部がネクスペリアおよびその委託先に対し、特定の半導体製品・部品の輸出を禁止する通知を出しました。さらに10月17日、中国側のネクスペリアは「オランダ本社によりアカウントが凍結され、給与の支払いも停止された」と発表しました。親会社の聞泰科技は「一部のアカウントが封鎖されたのは事実だが、国内供給を確保するため独自に対応している」と説明しました。これに対し、オランダ側のネクスペリアは中国側の主張を否定しています。
10月19日、ネクスペリア(中国)は公式WeChatアカウントで「全社員は中国法人の指示に従い、法定代表者の承認を得ていない外部からの命令には従う必要がない」とする公開書簡を発表しました。書簡では、経営陣が事業運営の安定を確保し、外部からの干渉を阻止する方針を強調しています。
今回、オランダ本社が発した顧客向け警告は、中国法人の独立姿勢に対する直接的な反応とみられています。
報道によれば、ネクスペリアの主要顧客である自動車業界は、この品質警告の影響を最も受けやすいとされています。もし中国工場製チップと他地域製チップの品質に差が生じれば、生産や信頼性への影響、さらにはリコールや保証請求のリスクが発生する可能性があります。こうした状況を受け、欧米の自動車メーカーが中国製ネクスペリアチップの使用を停止する可能性があり、すでに深刻な供給不足がさらに悪化する懸念が高まっています。
公開資料によると、ネクスペリアはドイツと英国にウエハー製造拠点を持ち、マレーシアとフィリピンにもパッケージング・検査工場を有していますが、中国・広東省東莞市のパッケージング・検査工場は最大規模であり、全世界の約70%のパッケージング工程を担っています。聞泰科技の資料によれば、中国国内の生産能力はネクスペリア全体の約80%(主に後工程のパッケージング・検査)を占め、中国市場の売上比率は全体の約50%に達しています。
報道によると、10月以降、東莞工場では生産調整が始まっています。輸出規制や原材料供給の断絶により、一部生産ラインが停止し、従来の三交代制から「4日勤務・3日休み」へ移行しました。従業員によれば、労働時間の減少により収入が約3割減少したということです。工場管理側は、現在の原材料在庫は年末までしか維持できない見通しを示しました。
中国国内の新エネルギー車メーカーも苦しい状況にあります。あるBYDのサプライヤーによると、現在、国産の代替チップを必死にテストしているものの、その性能と安定性はいまひとつだということです。「まるで控え選手に突然決勝戦に出ろと言うようなもので、適応には時間がかかる」とその関係者は話しています。
業界関係者は、今回の事件が国際的な半導体サプライチェーンの構造的リスクを露呈したと指摘しています。ネクスペリアの特徴は、設計と製造をヨーロッパで行う一方で、パッケージング・検査工程の約7割を中国・東莞工場で実施している点にあります。このように三大陸にまたがる生産体制が、政治的・制度的な対立の中で正常な運営を維持することを難しくしています。
10月21日には、中国商務部長の王文涛氏が欧州委員会のシェフチョビッチ副委員長およびオランダ経済大臣カレマンスとそれぞれオンライン会談を行ったと報じられました。中国側は強硬な姿勢を示したとされていますが、現時点で双方とも新たな進展を発表していません。ネクスペリアのグローバル生産体制の安定性は依然として不透明であり、自動車業界や電子産業への影響拡大が懸念されています。