米中貿易危機、発生から2日で沈静化?──中国はレアアース供給維持を強調、米財務長官「100%関税の引き上げは不要」

10月9日、中国はレアアースの輸出管理を一段と強化しました。海外で製造される製品について、0.1%以上の中国産レアアースが含まれている、あるいは中国のレアアース加工技術を使用している場合には、輸出時に北京当局の許可を得る必要があると定めました。これは、アメリカが半導体分野で採用している「域外適用」に近い措置であり、実質的に世界のレアアース供給網を中国が統制する構図となります。
この発表は国際社会に大きな衝撃を与えました。米国のトランプ大統領は10月10日、直ちに反撃に出ました。11月1日から中国製品に対し100%の追加関税を課すと発表したうえで、習近平国家主席との会談を中止する可能性にも言及しました。さらに、トランプ氏はボーイング製航空機の部品に対しても輸出規制を検討していると公に述べました。ロイター通信によると、トランプ氏はホワイトハウスでの取材に対し、「これは中国によるレアアース輸出制限に対する米国側の対応の一環だ」と語ったということです。
米中の緊張激化は瞬く間に世界の金融市場を揺るがしました。米国株の先物は全面安となり、ダウ平均は0.6%下落、S&P500は1%、ナスダックは1.3%下落しました。アジア市場も急落し、滬深300指数は0.6%、ハンセン指数は1.2%、日経平均は2.1%下落しました。ビットコインとイーサリアムもそれぞれ2.7%、5%下落しました。
こうした中、中国商務部は10月12日の朝に書面声明を発表しました。声明では、「中国は関連物項に対して法に基づき輸出管理を実施するものであり、管理体制の改善や拡散防止義務の履行、世界平和と地域の安定の維持を目的としている」と説明しました。
さらに、「中国政府は法と規則に則って輸出許可を審査する。民生用途であり、合法的な目的に合致する申請であれば承認される。企業は心配する必要はない」と述べました。
このような柔らかい言い回しは、米国のメディアや国際世論から「中国がトーンを和らげた」と受け止められました。全面的な譲歩とまでは言えないものの、少なくとも緊張緩和のメッセージを発しており、北京がワシントンとの対立を沈静化させたい意図を示した形です。
その後、トランプ大統領は、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿し、「心配はいらない、中国はすべてうまくいくだろう。尊敬すべき習近平主席は、ただ少し気分がすぐれないだけだ」と書き込み、「私は中国を傷つけるのではなく助けたい」と付け加えました。
同日、米国のヴァンス副大統領はインタビューで「アメリカは中国に対して大きな影響力を持っている」と述べつつも、「トランプ大統領は常に理性的な交渉者である」と語りました。
また、米国のスコット・ベッセント財務長官も「今後数週間以内に双方が交渉を行う予定だ。米中関税を100%に引き上げる必要はない」と明言しました。
米国政府の姿勢が和らぐ中、13日(月)の国際資本市場では、金や原油などの資産がいずれも大幅に上昇し、ドルは強含み、株式市場も1%以上上昇しました。特にハイテク株が相場をけん引し、市場全体のムードは平常を取り戻しました。
今回の米中貿易戦争の急激なエスカレーションは、週末の2日間を経て、まるで大国同士の激突が「茶番劇」に変わったかのような様相を呈しています。双方とも事態の沈静化を望む姿勢を見せており、今後の焦点はどのように幕を引くかに移っています。
その「幕引き」の象徴となるのが、トランプ氏の発表した「100%関税」を実際に実施するかどうか、そしていつ実施するかです。評論家の中には、「トランプ氏は今後1週間前後に100%関税の発動を1か月延期すると発表する可能性が高い」と見る向きもあります。
完全撤回となれば確かに「茶番」が過ぎるため、延期という形で一旦の収束を図る公算が大きいとみられます。もしトランプ氏が近く延期を発表すれば、中国側もそれに呼応して、米国へのレアアース供給を約束するでしょう。
こうした段階的な落としどころを作らなければ、トランプ大統領と習近平国家主席が予定する韓国での会談が危うくなる可能性が高く、現時点で双方ともその「破局」は望んでいないはずです。