米最高裁、トランプ関税を越権と判断 対中実効関税率は約10ポイント低下との試算

米国時間2月20日、米連邦最高裁判所は6対3の多数意見により、トランプ政権が「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づいて実施していた大規模関税について、法的根拠を欠くとの判断を示しました。これにより、当該関税は導入当初から無効であったと認定されました。これを受け、ホワイトハウスは関連する大統領令に基づく一部の関税措置が今後効力を失うことを確認しました。
最高裁は、IEEPAは本来、国際的な緊急事態において金融制裁を実施するための法律であり、資産凍結や取引制限、資金移動の遮断などを想定したものであって、大統領に関税を課す権限を明確に与えたものではないと指摘しました。
多数意見は、米国憲法において課税権は議会に属すると明記されている点を強調しています。これまで議会が大統領に関税措置を認める場合には、「通商拡大法232条」や「通商法301条」のように、法律条文の中で権限が明確に規定されてきましたが、IEEPAには同様の規定が存在しないと判断されました。
このため、同法を根拠として世界規模の関税を実施したトランプ政権の措置は、権限を逸脱したものに当たると結論付けられました。
今回の判決では、フェンタニル密輸対策を理由としてカナダ、メキシコ、中国からの輸入品に課されていた関税措置も否定され、さらにブラジルやインド向けに個別に課されたIEEPA関税についても疑義が示されました。
ただし、すでに徴収された関税の返還を輸入業者が請求できるかどうかについては、最高裁は判断を示しておらず、今後は下級審で審理される見通しです。
判決公表後まもなく、トランプ大統領はホワイトハウスで新たな大統領令に署名し、すべての国を対象に輸入品へ一律10%の関税を課す方針を発表しました。ホワイトハウスの説明によれば、この新関税は米東部時間2月24日午前0時1分に発効する予定です。
今回の関税措置は「1974年通商法」第122条に基づくもので、大統領は特定条件下で一時的に関税を引き上げることが可能とされています。ただし適用期間は最長150日に限定され、延長には議会の承認が必要となります。
中国への影響
今回の判決は、中国にとって短期的には一定の追い風となる一方、長期的な圧力が弱まるわけではないとみられています。
トランプ政権が昨年IEEPAを根拠として中国に課した関税は、主に二つの内容から構成されていました。ひとつはフェンタニル問題を理由とした10%の追加関税、もうひとつは貿易赤字などを理由とする世界共通の10%基準関税です。
最高裁の判断により、これらはいずれも無効とされました。分析によれば、中国からの輸入品に対する実効関税率は大幅に低下し、米国企業が負担する輸入コストは短期的に下がる可能性があります。その結果、アップルやウォルマートなど米国の大口輸入企業が中国への発注を増やす可能性も指摘されています。
近年、中国製品の米国輸入に占める割合は約12%から8%前後まで低下していましたが、今回の判決を受け、一部のサプライチェーンがベトナムやメキシコへの移転ではなく、中国へ戻る可能性もあるとみられています。
ここまでの状況を見る限り、楽観視はできません。トランプ大統領は判決直後、すべての国を対象とした新たな 10%の共通関税を速やかに導入しており、中国も当然、その対象に含まれています。
この関税は最長 150 日間の暫定措置となっていますが、同時にトランプ政権は追加の 301 条調査に着手する方針も示しています。第 1 期政権時に導入された対中 301、232 条関税(鉄鋼・アルミ・自動車部品など、多くの品目で 25%以上)は、今回の判決の対象外となっており、引き続き適用されています。また、フェンタニル関連の残存10%関税については、当初、トランプ大統領の訪中を機に撤廃される可能性も取りざたされていました。
今回の最高裁判決が中国全体の関税水準に与える影響については、2月20 日の判決前の35~40%から、判決後は25~30%へと、およそ10ポイントの引き下げが試算されています。
このため、中国に対するIEEPA関税は撤廃されたものの、既存関税と新たな世界共通関税が併存することで、総合的な関税水準は依然として他国と比べ高い状態にあるとされています。