聞泰科技、ネクスペリアの支配権回復へ法的対抗 最大80億ドルの国際仲裁も視野

12月26日、聞泰科技(Wingtech)は2025年第5回臨時株主総会を開催し、ネクスペリア(Nexperia、中国名:安世半導体)をめぐる支配権問題について最新の状況を明らかにしました。
同社会長の楊沐(Yang Mu)氏は総会の場で、聞泰科技は安世半導体の株主としての正当な権利を守るため、あらゆる必要な法的手段を講じる方針であり、いかなる解決策であっても、聞泰科技がネクスペリアに対する完全な株式および経営支配権を回復することを前提としなければならないと強調しました。
楊沐氏によれば、聞泰科技はすでに本件をめぐりオランダで複数の法的手続きを開始しており、2026年1月にオランダで予定されている第2回公聴会において、改めて自社の立場を明確にし、積極的に権利保護を進める考えです。法定期間内に問題が解決しない場合には、国際仲裁の申し立ても視野に入れており、想定される損害賠償額は最大で80億米ドルに上る可能性があるとしています。
また同社は、オランダ企業裁判所が指名したネクスペリアの独立取締役および株式管理人と、すでに第1回目の正式協議を実施したことも明らかにしました。協議では、支配権の帰属、コーポレートガバナンス、サプライチェーンの安定といった主要な論点について意見交換が行われ、今後も対話を継続することで一致したとしています。
今回の対立の発端は、2025年9月30日、オランダ経済省が「深刻なガバナンス上の欠陥がある」としてネクスペリアに対し大臣命令を出したことにあります。この命令により、ネクスペリアおよび世界約30の関連主体は、1年間にわたり、資産、知的財産、事業、人的配置などについて変更を行うことを禁じられました。
その後、オランダ企業裁判所は10月7日、①聞泰側経営陣のネクスペリア関連会社における取締役職務を停止すること、②裁判所が指名する決定的な議決権を持つ独立した非執行取締役を任命すること、③ネクスペリアのほぼ全株式を第三者の管理下に置くこと、を裁定しました。
オランダ経済省は11月中旬に、当初の大臣命令を一時停止すると発表しましたが、企業裁判所の裁定自体は引き続き有効とされています。現在もネクスペリアの株式は管理下に置かれ、経営の実質的なコントロールはオランダ本社の経営陣が握っており、聞泰科技は株主としての支配権を行使できない状況が続いています。
聞泰科技は支配権回復に向け、10月中旬にオランダ政府の関連決定について提訴し、11月には訴えの範囲を拡大しました。また10月15日には正式な紛争通知を提出し、オランダ側の行政介入が「中蘭二国間投資保護協定」に違反する可能性があるとの認識を示しています。協議や司法手続きを通じて6か月以内に解決が図れない場合、国際仲裁に移行する方針です。
この支配権問題は、すでにネクスペリアのグローバルなサプライチェーンにも実質的な影響を及ぼしています。2025年10月26日、ネクスペリアのオランダ本社は、中国拠点(東莞工場)向けのウエハー供給を停止しました。その後、中蘭双方で一定の政策的な調整は見られたものの、現時点でも供給は再開されていません。関係者によれば、中国拠点のウエハー在庫はすでに大きく減少しており、供給停止が続けば2026年初めにも枯渇する可能性があるとされています。
こうしたリスクに対応するため、ネクスペリア中国拠点は、中国国内法に基づき、生産体制の自立化に向けた対応を進めています。中国国内ウエハーサプライヤーの試験・認証作業もその一環です。楊沐氏は、ネクスペリア中国拠点が外部からのウエハー調達先の拡充を進めており、2026年1~2四半期にかけて新たなサプライヤーの検証を完了させる見通しで、生産の継続性を確保していく考えを示しました。