ファーウェイの自動運転、他社にとって脅威になるか
先日、北汽(BAIC)傘下の新エネルギー車ブランドARCFOX(極狐)とファーウェイが、「世界自動運転の新たなベンチマーク」として発表した純電気自動車「極狐アルファS」は、業界内外で非常に高い関心を集めている。上海モーターショー前に、ファーウェイの自動運転関連役員がインタビューで「我々は絶対に1位だ」と発言し、自動運転分野で駆け出しで経験が乏しいファーウェイが急速に注目され、ネット上では「テスラに圧勝」、「他社を秒殺」などの書き込みで大げさに騒ぎ立てている。
話題になっているこの動画は全部で7分間、ファーウェイの自動運転システムを採用した極狐アルファSを撮影したもので、運転者は最初から最後まで両手をハンドルから離し、車両に何の介入もしなかった。歩行者や出前兄さんが突然現れたり、反対側から左折車が飛び出したりしても、リズムを維持したり、減速したり、回避したりして、複雑な交差点を無事に横断することができた。
ファーウェイの自動運転技術は実際どうなのか。動画で見られた運転体験を本当にユーザーに提供することができるだろうか。
AI財経社が完成車メーカー、EVベンチャー、自動運転業界の関係者にインタビューしたところ、動画はあくまでもRobotaxiによる限定された地域での走行結果で、ファーウェイはそれを量産車にイメージを置き換えようとしているとの見方が出ている。
ネットで公開された極狐アルファSのロードテスト動画についても、多くの業界関係者が疑問を抱いている。
ある自称「元上海ファーウェイ従業員」の暴露によると、当元従業員は、動画のテスト区間で、千回以上のテスト走行をしたことがあり、多くの自動運転企業が動画のレベルに達することができる。ファーウェイ役員が「1000キロテイクオーバーなし」や「テスラよりも強い」と発言したのは言い過ぎで、当該役員は部下にだまされているに違いないと直言した。
あるEVベンチャーのベテラン自動運転測定士はAI財経社に対し、「(極狐アルファS)は世界のどこでも自動運転モードで走行できるテスラのようなものではない」と明言した。
その理由として、まず、動画に映ったテスト走行エリアは、上海市浦東金橋工業区と碧雲工業区一帯であり、そこはまさにファーウェイ上海研究所の近くでもある。第二に、ファーウェイは、このエリアで事前に自動運転用の高精度地図のデータ採集も行っているはずである。
前出の自動運転測定士は「ネット上で今多く議論されているのは、動画の中で人間が飛び出してくる部分である。もし高精度地図のレイヤーに基づき、前後データの比較から前方に障害物があると判断しなかったら、テスト車両はこのような反応をしなかっただろう」と述べた。
業界では、各自動車メーカーが独自で十分な都市数や地域をカバーする高精度地図を作ることが不可能だとの見方が一般的である。これまで、小鵬汽車のP7の高精度地図は重点都市の高速区間しかカバーできなかった。ファーウェイが現在公開している情報によると、2021年末までに量産する際には、北京市、上海市、広州市、深セン市の4都市の高精度地図を提供する。
ファーウェイは北汽との提携のほか、現在、提携先に長安と広汽があることを明らかにした。ファーウェイの自動運転関連責任者は、「ファーウェイと北汽、長安、広汽の3社との提携はいずれも1車種に限らず、一連の車種であるため、2022年上半期までには、大量の新車が発売されるだろう」と述べた。
しかしこのような発言は、完成車メーカーの意見と食い違っている。AI財経社が長安と広汽のエンジニアから得た情報によると、両社の提携の進展は比較的遅く、現在も研究開発段階にとどまっている。「今年中に試作車を発表する可能性があるが、本格的な量産販売には明確なスケジュールがない」という。
業界関係者数人はAI財経社に対し、「北汽とファーウェイが提携できたのは、北汽がファーウェイにARCFOXのシャシーデータを公開したからである」と語った。ある消息筋によると、長安と広汽との提携において、ファーウェイの発言権はこれほど大きくないという。