BYDとCATL、ニードルパンチ試験を巡る論戦の背後にあるのは
CATLがこのほどニードルパンチ試験(釘刺試験)に関する動画を2回連続で公開し、BYDと論戦を交わしている。
5月22日、CATLはニードルパンチ試験を行った際、スチール針がバッテリーパックを貫通しておらず、バッテリーパック外装の鋼板で折れていたことを示す動画を配信した。しかし、動画が配信された後、一部のネットユーザーからは、ニードルパンチ試験の本質はバッテリーの短絡をシミュレートするためであり、刺せたり刺せなかったりするための試験のではないとの不満が出ている。
CATLは23日夜、もう1本の動画を配信した。動画の中でCATLの5系と8系三元リチウムバッテリーはいずれもニードルパンチ試験に合格した。この2种類の電池はスチール針が刺さって静止1時間後、電池は急激な昇温と爆発現象が現れなかった。CATLは、「弊社は2017年にすでに3元電池のニードルパンチ試験に耐えられる技術をマスターしていたのに、なぜ宣伝しなかったのか。ニードルパンチ試験=電池は安全だということに対して疑問を持っているからだ」と話した。
これは、BYDが3月に自社のリン酸鉄リチウムバッテリーをベースに開発した「ブレードバッテリー」のニードルパンチ試験動画を発表した後とってきた攻撃的な姿勢へのCATLの反撃だと世論は見ている。当時BYDは、自社ニードルパンチ試験で自社開発の「ブレードバッテリー」とリチウム三元電池との異なる試験結果を以て、リチウム三元電池はニードルパンチ試験ですぐに爆発を起こしたことに対して、自社の「ブレードバッテリー」は温度が異常に上昇しなかったとアピールした。その後、CATLの董事長の曽毓群氏は、「バッテリーの安全性とバッテリーテスト結果の乱用は別問題だ。テスト結果をバッテリーの安全性と同レベルで考える人もいる」と釘を刺した。
24日夜、BYD販売会社副総経理の李云飛氏は、中国版ツイーターの「Weibo(微博)」で「ニードルパンチ試験の目的はバッテリーをショートさせることで、バッテリーの熱暴走を観察することだ」と述べたうえ、バッテリーがショートしていないということは、試験が失敗したということにほかならないとCATLを皮肉った。直後の25日午後、自称「CATLのエンジニア」でIDが「David工科男」という人物は、「ニードルパンチ試験はバッテリーに金属物が刺さったシーンをシミュレートするためのものて、バッテリーは普通針刺さると内部短絡が発生する。しかし、ニードルパンチ試験の本当の目的はバッテリーを内部短絡させることではなく、金属が刺さった状態で熱暴走が発生する确率をシミュレートすることだ」と、Weibo上で反論した。
CATLのスタンスは、バッテリーパックの技術的な最適化により安全性が担保されるため、バッテリー単体のニードルパンチ試験はもはや意味を有しないということだ。これに対してBYDのスタンスは、バッテリー単体の試験で熱暴走を避けることができなければ、パックや全体の安全性は全く保証されないということだ。
5月12日、工業情報化省は、「バッテリー単体で熱暴走が発生した後、バッテリーシステムが5分以内に発火したり爆発したりせず、乗員の安全な脱出時間を確保すること」を含む「3つの電気自動車の強制基準」を公布した。この基準はリチウム三元電池を対象としたものと考えられている。これまでに起きていた自然発火現象を見ると、リチウム三元電池を搭載した複数の電気自動車は自然発火から火災までの時間が数十秒以内だったためだ。リチウム三元電池には安全上の問題があるが、エネルギー密度が高いため、多くの自動車メーカーが選択しており、一部のメーカーはさらに密度の高いリチウム三元電池の利用を検討している。
CATLとBYDは、一体なについて争っているのか。
実はBYDは、自社開発の「ブレードバッテリー」の優位性を宣伝しつつ、三元リチウムバッテリーを大量に使っている。BYDは、現在販売している10数車種に搭載されているバッテリーは三元リチウムバッテリーで、リン酸鉄リチウム路線のために三元リチウムバッテリーを放棄するはずがない。
CATLの三元リチウムバッテリーは一般的によく知られているが、2019年のCATLのリン酸鉄リチウムバッテリーの国内搭載量は11.2GWhで、2位の国軒高科(Guoxuan High-Tech)を約4倍上回り、国内での搭載量が最大のリン酸鉄リチウムバッテリー単体サプライヤーとなる。また、リン酸鉄リチウムへの研究開発投資も継続しており、2019年末までに、CATLののリン酸鉄リチウム単体のエネルギー密度は180wh/kgに達した。
結局彼らは、誰が動力電池を定義する権利を持つのか、あるいは誰が「何が良い動力電池」を定義する資格があるのかを争っているのではないか?
かつての動力電池業界の覇者として、BYDは第2位に甘んじているわけではなく、業界の構造を変え、現在の覇者の手から発言権を奪い返すには、往々にして構造を打ち破ることができる革新的な製品又はサービスが必要だ。明らかに自社開発の「ブレードバッテリー」がそのような使命を担っていたことが、この論争の出発点となった。