CATL「鈉新」ナトリウムイオン電池、乗用車実車テスト開始へ――リチウムイオン電池と併走する二本立て戦略が始動

1月30日、CATLのナトリウムイオン電池ブランド「鈉新(ナーシン)」が、乗用車分野で公開の冬季実車テストに入る見通しであることが分かりました。今回のテストには長安の欧尚(Oshan)が参加し、今後はGAC(広汽)、JAC(江淮)の乗用車モデルも順次加わる予定です。

これは、これまで「まずは定置型蓄電向けが中心で、車載用動力電池としての本格採用には慎重論が強かった」ナトリウムイオン電池が、本格的な乗用車実証段階に踏み出したことを意味します。

実際、CATLによるナトリウムイオン電池の事業展開は、ここにきて明らかにスピードを増しています。

同社は2025年4月、初開催となったスーパー・テクノロジーデーにおいて、世界で初めて量産化を実現したナトリウムイオン電池を発表し、あわせて独立ブランド「鈉新」を立ち上げました。さらに同年9月には、同製品が中国の動力電池新国家標準認証を取得し、世界初の新国標適合ナトリウムイオン電池となりました。

続く2025年12月のサプライヤー大会では、CATLが2026年以降、交換式電池、乗用車、商用車、エネルギー貯蔵といった複数分野でナトリウムイオン電池の大規模展開を進める方針を明確にし、「ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池の並行発展」という技術戦略を打ち出しています。

今回の乗用車向け冬季テスト開始は、業界内では、ナトリウムイオン電池が「実証導入」段階から実使用環境での本格検証フェーズへ移行する重要な節目として受け止められています。

CATLによりますと、「鈉新」動力電池はマイナス40℃からプラス70℃までの広い温度域で安定して動作することが可能で、寒冷地における新エネルギー車の性能低下という長年の課題を主なターゲットとしています。

標準タイプの車両では、同電池を搭載したプラグインハイブリッド車で純電走行距離200km超、純電気自動車では500km超の航続距離が見込まれています。狙いは航続距離の最大化ではなく、低温環境下における実用性と安定性の確保にあります。

ここ数年、ナトリウムイオン電池は「将来性は高いものの、用途は限定的」と見られてきました。しかし、その産業化を本格的に後押ししたのは、新エネルギー車の普及過程で顕在化した構造的課題でした。

従来のリチウムイオン電池は低温環境において性能低下が大きく、北方地域や高緯度地域では「冬季の航続距離が大幅に低下する」「充電が困難になる」といった問題が常態化しています。一方で、安全規制は年々強化され、新国家標準では熱拡散、底部衝突、急速充電耐久などに対して、より厳格な基準が設けられました。

こうした環境の中で、ナトリウムイオン電池の特性が改めて注目されています。

業界では、ナトリウムイオン電池は低温特性、安全性、資源面において構造的な優位性を持つと評価されています。電解液の凝固点が低く、電極構造が安定していることから、マイナス20~30℃といった条件下でも比較的高い可用電力量を維持することが可能です。また、熱安定性にも優れており、針刺しや圧縮といった過酷な試験においても発火・爆発が起きにくく、安全性はリチウム電池を大きく上回るとされています。

資源面においても、ナトリウムは地殻中に広く分布しており、供給の地域偏在が小さい点から、リチウム資源への依存を緩和する補完的なルートとして位置付けられています。

もっとも、技術的な現実を踏まえると、ナトリウムイオン電池がリチウム電池を全面的に置き換える段階には、現時点では至っていません。

最大の制約はエネルギー密度です。現在のナトリウムイオン電池は、おおむね160〜175Wh/kgの水準にとどまっており、主流である三元系リチウム電池やリン酸鉄リチウム電池を大きく下回っています。業界では、将来的に技術が成熟した場合でも、理論上限は200Wh/kg前後にとどまる可能性が高いと見られています。

また、サイクル寿命の短さも課題の一つです。CATLの公表データによれば、ナトリウムイオン電池は15分で80%まで充電可能な急速充電性能を備える一方で、理論上のサイクル寿命は約3000回にとどまり、リチウムイオン電池のおよそ4分の1水準とされています。

こうした制約から、超長距離航続を求める中高級純電気自動車において、ナトリウムイオン電池が主流となる可能性は、現時点では高くないとみられます。

一方で、航続距離の要求が比較的限定される一方、安全性、低温耐性、コストに重きが置かれる用途においては、現実的な選択肢となり得ます。都市型小型EV、寒冷地向け車両、商用車、交換式電池システム、さらにはエネルギー貯蔵分野などが想定されています。

CATLの現在の動きを見る限り、同社の狙いはナトリウムイオン電池への移行ではありません。リチウムイオン電池が高エネルギー密度領域を担い、ナトリウムイオン電池が安全性・低温性能・コストの下限を支える――そのような複線型の電池技術体系の構築を目指しているとみられます。

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