Li Auto、MEGAを1.14万台リコール──上海での走行中火災事故と関連

10月31日、Li Auto(理想汽車)は国家市場監督管理総局にリコール計画を届け出、11月7日から、2024年2月18日〜12月27日までに生産された純電動MPV「MEGA(2024年式)」計1万1411台をリコールすると発表しました。
Li Autoによると、リコールの原因は該当車両に使用された冷却液の防食性能が不十分であることにあります。特定の条件下では、冷却回路内の駆動用バッテリーおよび前部モーターコントローラーの冷却アルミプレートが腐食・漏洩するおそれがあり、その結果、警告灯の点灯、出力制限、電源が入らないなどの不具合が発生する可能性があるとしています。さらに、極端な状況ではバッテリーの熱暴走を引き起こす危険性もあるといいます。
このリコールの直接的な契機となったのが、10月23日夜に上海で発生したMEGAの走行中火災です。車両の底部から爆発音とともに火が上がり、火勢は10秒足らずで急速に拡大、車体は全焼しました。幸いにも人的被害はありませんでした。Li Autoは事故発生後、消防や監督当局と協力して原因調査を進めていますが、手続きが複雑なため、現時点では最終的な技術的結論には至っていないとしています。
同社は声明で、「事故発生前、各バッテリーセルの状態パラメータはすべて正常であり、セル自体の異常による発火の可能性は排除できる」と説明。事故直後には社内調査を開始し、クラウド警報データや検証結果を再確認したところ、同一バッチの車両に冷却液防食性能の不備があることを突き止めたため、自主的にリコールを届け出たとしています。
Li AutoのCEO・李想氏もSNS上でコメントを発表しました。「今回のリコールはあくまで自主的なものです。事故の原因究明には時間がかかり、1〜2か月を要する場合もあります。我々はすでに事故につながる潜在的リスクを特定しました。たとえ1万分の1のリスクでも、放置することはできません。事故の確率が1万分の1でも、人命は100%です」と述べました。
今回の「MEGA火災」事件は、消費者の安全意識を大きく揺さぶっただけでなく、新エネルギー車業界全体にも波紋を広げています。専門家は「この事故は、三元系リチウム電池が持つ熱安定性の弱点を改めて浮き彫りにした」と指摘しています。Li Auto MEGAはCATL(寧徳時代)製の最高級三元系電池を搭載し、多層の断熱材やミリ秒単位で高圧電流を遮断できる安全システムを備えていたにもかかわらず、火勢を制御できませんでした。
一方、リン酸鉄リチウム電池は熱暴走時の燃焼速度が比較的に緩やかで、安全性が三元系より高いとされています。今回の事故を受け、複数の自動車メーカーが三元系電池を搭載する新モデルの発売を延期したり、リン酸鉄リチウム電池への切り替えを加速させる動きも出ています。統計によれば、2021年12月時点で48%だった三元系電池の搭載比率は、2024年12月には25%に低下し、リン酸鉄リチウム電池は75%まで上昇。2025年1〜9月には累計装車量が402.6GWhに達し、市場シェアは81.5%と前年同期比62.7%増を記録しました。
販売面でもLi Autoは苦戦が続いています。2025年9月の販売台数は3万3951台で前年同月比36%超の減少となり、5か月連続で前年割れを記録しました。10月の納車台数も3万1767台と前月比6.4%減少しています。1万5000元の下取り補助など販売促進策を打ち出したものの、効果は限定的です。
業界では、「今回のリコールを通じて、どこまで消費者の信頼を回復できるかが、Li Autoが純電市場で再び浮上できるかどうかの分水嶺になる」との見方が広がっています。