中国市場では、かつて華々しい注目を集めていた「智能駕駛（スマート運転）」が、今では静かに人々の視界から姿を消しつつあります。最近では、多くの主要な新エネルギー車ブランドがプロモーション戦略を見直し、かつて大々的に打ち出されていた「スマート運転」や「高度自動運転」といった表現が、より控えめで技術的に中立な「運転支援」という言葉に置き換えられつつあります。この変化の背景には、規制強化と業界内におけるリスク管理意識の高まりがあるとみられています。

自動車メーカーのPR戦略が一変：「スマート」から「支援」へ

たとえばシャオミが最近発売した新型車「SU7」シリーズの公式予約ページでは、これまで「シャオミスマート運転 Pro」とされていた名称が「シャオミ運転支援 Pro」に変更され、上位グレードの「シャオミスマート運転 Max」も「シャオミエンドツーエンド運転支援」へと名称が改められました。

このような傾向はシャオミに限らず、Li Auto、NIO、AVATA、Xpengなどの新興ブランドにも共通して見られ、「スマート運転」機能の宣伝は控えめになり、代わって運転体験や車内空間の快適性といった要素に焦点を当てるようになっています。

一部メディアがゴールデンウィーク中に複数の新エネルギー車販売店を訪れたところ、「スマート運転」はもはや主力の売り文句ではなく、むしろ顧客から質問されて初めて説明される「隠し機能」となっていました。例えば、「都市部でのNOA（注）は利用可能か」「ハンズオフ走行はできるか」といった質問に対して、販売員は「これはL2レベルの運転支援です」「ハンズオフには対応していません」といった説明にとどめ、運転の責任はあくまでユーザーにあると繰り返し強調していました。

規制強化：工業情報化省と公安省が同時に圧力

こうした動きの背後には、監督当局の明確な方針転換があります。今年4月16日、工業情報化省の装備工業一司は通達を出し、自動車メーカーに対して、運転支援システムの機能の限界を明示し、「自動運転」「高級スマート運転」「代行駐車」といった誤解を招く表現の使用を禁じました。プロモーションでは「L2レベルの運転支援」といった明確な表現を使い、運転者が常に操作に関与する必要性を強調するよう求めています。

4月17日、公安省の道路交通安全研究センターも公開文書を通じて、「スマート運転」に関する虚偽広告を禁止するとともに、誤解を招く宣伝によって重大な結果が生じた場合には、関係者に法的責任が問われると明言しました。

この政策転換には前兆もありました。今年3月末、シャオミの「SU7」が徳上高速道路上で重大な人身事故を起こし、初期調査では運転支援機能使用中の注意散漫が原因とされました。この事故は世論を大きく揺るがし、多くの人々が自動車メーカーの宣伝における機能誇張を批判。この出来事が「スマート運転」という表現を見直す決定打となったのです。

業界関係者：「言い換えは痛くも痒くもない」、だがOTA制限の影響は深刻

このような宣伝上の「風向きの変化」にもかかわらず、複数の業界関係者は、今回の新規制が研究開発やマーケティング戦略に与える実質的な影響は小さいと見ています。

ある自動車メーカーのマーケティングマネージャーは、「『スマート運転』と言えないなら名前を変えればいいだけ。研修資料を書き直したり、宣伝用語を修正する程度で済むため、コストはほとんどかかりません」と話します。また、「ルールのグレーゾーンを突く手法は今後も変わらない。訴求ポイントが『何ができるか』から『特定条件下で何が可能か』に変わるだけで、本質的なマーケティングの目的は変わりません」とも述べています。

一方で、より深刻な影響として指摘されているのが、OTA（Over-The-Air：ソフトウェアの遠隔アップデート）に関する規制強化です。従来は、メーカーが未完成の機能であっても迅速にアップデートを行い、必要に応じてhotfix（緊急修正）で対応することが可能でした。しかし新たな規制では、すべてのアップデートに事前審査と登録が必要となり、更新頻度も月1回に制限されました。これにより、企業はアップデートに対してより慎重な姿勢を取らざるを得なくなっています。

杭州に拠点を置くある新エネルギー車メーカーのスマート運転技術者X氏は、「以前は多少問題のある機能でも市場に出すことができましたが、今はそれができなくなりました。そのため、企業はソフトウェアの安定性や安全性をこれまで以上に重視せざるを得ません」と語り、「ユーザーを実験台にするようなやり方は、もはや通用しません」とも付け加えました。

結び：潮が引いた後にこそ求められる冷静さと透明性

「高度自動運転」からの相次ぐ撤退は、スマート運転技術の停滞を意味するのではなく、むしろ業界にとって必要な規範の再確認と安全性の見直しの機会だと言えるでしょう。規制の強化と安全意識の高まりの中で、自動車メーカーにはより成熟し、透明性のある姿勢が求められています。

ある業界関係者は「これは全面否定ではなく、必要な冷却期間です」と述べました。技術は今も進歩し続けています。リスクと責任を正しく認識してこそ、より遠くへ、より安定して前に進むことができるのです。

注：NOA（Navigate on Autopilot）とは、先進運転支援システム（ADAS）の一種で、目的地を設定すると自動的に運転する機能であり、中国の自動車メーカーがテスラのFSD（Full Self-Driving）に倣って開発しており、一定の条件下では運転者がペダルから足を離して手放運転することができます。