NVIDIA、中国向け特別仕様AIチップB30Aを投入へ:H20を上回る性能

8月22日付の「ワシントン・ポスト」によれば、NVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は台湾積体電路製造(TSMC)を訪問した際、同社が米国政府と協議し、中国市場向けに新たな人工知能(AI)チップを輸出する計画であることを明らかにしました。このチップは複数の関係者によって「B30A」と呼ばれ、従来のH20チップの後継製品と位置づけられています。

H20は、米国の輸出規制を順守するためにNVIDIAが特別に設計した「中国版」AIチップで、性能は同社のフラッグシップ製品H100の15〜30%にとどまります。今年4月、トランプ政権は「国家安全保障」を理由に、許可なしでのH20の中国販売を禁止しました。

7月、フアン氏は訪中時に、米国政府の承認を得てH20の販売を再開すると発表しました。さらに8月11日には、トランプ大統領が、NVIDIAが中国でのチップ売上の15%を米国政府に納付することで輸出許可を得たことを確認しました。

しかし7月31日、中国の国家インターネット情報弁公室はNVIDIAを呼び出し、H20チップに潜在する「バックドア」リスクについて説明を求めました。以前から米国政府がAIチップへのバックドア導入を制度的に検討していたことが指摘されており、企業が協力すれば輸出規制の一部免除を受けられるとの見方もありました。こうした背景から、H20の中国市場での先行きは不透明となっていました。

その一方で、ロイターや複数のテック系メディアによれば、NVIDIAは最新の「Blackwell」アーキテクチャに基づく新型チップB30Aを開発中とされています。B30Aはシングルダイ設計を採用し、演算性能はフラッグシップ製品B300の半分程度ですが、価格も半分程度と見られています。関係者によれば、B30AはHBM(高帯域幅メモリ)とNVLink(GPU間の高速接続技術)のサポートを維持する予定です。つまり、大規模モデルの学習やデータセンターでの運用に十分な実用性を持ち、単なる「縮小版」にとどまらず、H100を上回り、H20を大きく凌駕する性能を備えると予想されています。これに対し、H20は旧世代の「Hopper」アーキテクチャに基づいています。

また、NVIDIAは韓国サムスン電子や米国のAmkor Technologyなど主要部品サプライヤーに対し、H20関連の生産を停止するよう指示したと報じられています。

NVIDIAにとってB30Aは商業的な選択であると同時に、政治的な妥協でもあります。米国政府には「B30Aは最先端ではなく、B300の簡易版にすぎない」と説明しつつ、中国市場には「半額で半分の性能を提供し、複数を組み合わせればB300に匹敵する」と訴えることができるため、従来のH20に比べれば中国市場で受け入れられやすいとの見方があります。

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