BYDの435億香港ドルH株ライトニング・プレースメント、「巨額の隠れ債務」リスクに備えるため?

BYDは3月4日、435億香港ドル(約56億米ドル)規模のH株ライトニング・プレースメント(急速私募増資)を完了したことを発表しました。これは、自動車業界において数々の記録を樹立するものであり、BYDのグローバル戦略と技術革新を加速するための強力な資金調達を実現するとともに、運営資金を補充し、経営の健全性を高めることを目的としています。

ライトニング・ストック・プレースメントとは、上場企業が一般個人投資家ではなく、特定の投資家(主権基金、長期投資家、戦略的投資家など)に対して新株を発行し、資金を調達する迅速な資金調達方法です。投資家の参加を促すため、ライトニング・ストック・プレースメントは通常、市場価格を下回る価格で新株を発行します。

BYDが香港取引所に発表した公告によると、同社はゴールドマン・サックス(アジア)、UBS AG香港支店、CITIC CLSA証券などの引受業者と引受契約を締結し、1株あたり335.2香港ドルで1億2980万株の新H株を発行しました。調達総額は約435億900万香港ドルと見込まれ、手数料や費用を差し引いた後の正味調達額は約433億8300万香港ドルと見込まれています。

今回のプレースメントには、世界中のトップクラスの長期投資家、主権基金、中東の戦略的投資家などが積極的に参加し、注文は複数倍に達しました。その中でも、アラブ首長国連邦(UAE)のAl-Futtaimファミリーオフィスが戦略的投資家として参加しました。Al-Futtaim企業グループは1930年代に設立され、自動車、金融サービス、不動産、小売、医療など多岐にわたる事業を展開し、中東および東南アジアの20カ国以上で200以上の国際ブランドと協力しています。

BYDは近年、急速な成長を遂げており、2024年の新エネルギー車販売台数は425万台を超え、世界一の座を維持しました。しかし、その成長の裏側では、「巨額の隠れ債務」問題が指摘されています:

BYDはサプライヤーへの支払いを遅らせることで運転資金を確保する「サプライチェーンファイナンス」に過度に依存しており、これが2024年末時点で実質的な純負債が3,230億元を生み出しています。

新エネルギー車市場の競争激化や需要の減速により、売上成長が鈍化する可能性があります。その場合、サプライヤーへの支払いが滞り、資金繰りが悪化するリスクがあります。

今回のライトニング・ストック・プレースメントは、BYDが資金繰りリスクに備えるための予防策として行われた可能性があるとの見方があります。

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