BYD、南アフリカでの事業を加速──2026年に販売店を大幅増設へ

アフリカで電気自動車の需要が拡大するなか、BYDはこれまでにないスピードで同地域での事業領域を広げています。なかでも南アフリカ市場での急速な進展は、同社のアフリカ戦略における重要な柱となりつつあります。

ロイターが12月5日に報じたところによると、BYDは当初、2026年末までに南アフリカで約35店舗の販売網を構築する計画でしたが、旺盛な需要を受け、この目標を2026年第1四半期へ前倒しする見通しとなりました。BYD南アフリカ法人のゼネラルマネージャーであるSteve Chang氏は、同社がさらに拡大を加速し、2026年末までに販売店数を60〜70店舗へ増やす方針を明らかにしています。

BYDは12月4日、南アフリカでプラグインハイブリッドSUV「Sealion 5」を発売しました。価格は49万9,900ランドからで、トヨタ「カローラクロス」ハイブリッドなどと直接競合するモデルです。現在、同国で最も売れているBYD車は電動ハッチバックの「Dolphin Surf」で、これに「Shark」ピックアップが続いています。

南アフリカ市場の拡大を支えるため、BYDは2024年10月に、2026年末までに最大300基の急速充電ステーションを整備する計画を発表しました。電気自動車の普及が徐々に進む現地の環境を後押しする狙いがあります。

BYDがアフリカ市場に注目し始めたのは2010年代中頃で、まず南アフリカを拠点とし、その後ケニア、エジプト、モロッコなどへ展開を広げてきました。南アフリカ政府はここ数年、公共交通の電動化を進めており、「2025年予算報告」や各都市の排出削減計画などが、BYDの進出に追い風となりました。

事前の市場調査や認証制度への対応を通じて、BYDは早い段階で南アフリカでの事業許可を取得し、乗用車・商用車の事業展開に向けた基盤を整えてきました。また、同国の販売ネットワークや物流を活用することで、ナミビアやボツワナなど周辺国へも存在感を広げ、地域全体での連動効果を生み出しています。

2022年以降、BYDは南アフリカで「唐EV」や「漢」など複数の新エネルギー車を発売し、アフターサービス体制や試乗環境、ショールーム運営の整備を進めています。

一方、商用車もBYDがアフリカで成果を上げている分野です。2023年には南アフリカで120台の電動バスを受注し、現地の公共交通での導入が予定されています。またケニアでは、同社の電動バスが観光路線で運行されるなど、用途が広がっています。

BYDのアフリカ戦略では、各国の制度に対応し税制優遇を得るため、段階的に現地化率を高めることが重視されています。たとえば南アフリカの自動車生産・開発計画(APDP)では、部品の現地調達比率に厳しい基準が設けられています。BYDは以下のような形で現地化を進めています。

    • 現地での組立生産の検討
    • 部品の現地調達拡大
    • 現地人材の育成
    • エネルギー企業と連携した充電インフラ整備

これらの取り組みはコスト削減につながるだけでなく、中長期的な事業拡大に必要な制度上の基盤づくりにも寄与しています。

投資の進め方や体制整備、南アフリカでの継続的な事業拡大の状況を見る限り、BYDのアフリカ戦略は「長期的な市場開拓」を重視する姿勢が鮮明です。南アフリカ政府による電動化推進、中国ブランドの価格・製品競争力の向上といった環境も追い風となり、BYDは今後数年でアフリカでの市場シェアをさらに広げていくとみられています。

21

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。