BYD、東南アジア戦略を加速:カンボジアで工場起工、インドネシア進出は順調、ベトナムは延期

4月28日、BYDはカンボジア・シアヌーク州において、同社初となる現地乗用車工場の起工式を行いました。カンボジア工場は、2024年7月に生産能力15万台のタイ工場が完成・稼働したのに続く、東南アジアで2番目の工場となります。
BYDアジア太平洋自動車販売事業部の劉学亮総経理によれば、カンボジア工場の年間生産能力は1万台を予定しており、2025年第4四半期の稼働開始を目指しています。現在、BYDは総販売代理店であるハーモニーカーズと連携し、2025年末までにカンボジア国内に10店舗を設立する計画で、その中には敷地面積1.5万平方メートルのフラッグシップ店舗も含まれています。この店舗は、カンボジアの自動車業界において最大規模の販売拠点となる見込みです。
BYDは2023年7月にカンボジアでの工場建設を発表し、当初は年間2万台の生産計画を立てていました。カンボジアのフン・マネ首相は、同工場で生産される電気自動車はカンボジア市場向けのみならず、東南アジア諸国への輸出にも活用できると述べています。
カンボジアの自動車保有台数は2021年現在で約190万台、人口1,000人あたりの保有台数は約21台です。年間輸入車台数は約6万台で、そのうち90%が中古車、新車はわずか10%にとどまっています。2022年と2023年の新車販売台数はそれぞれ3.1万台、3.4万台で、前年比でそれぞれ32.0%、10.3%の成長を記録しました。新車市場で最大のシェアを持つブランドはフォードで、次いでトヨタが続いています。
カンボジア政府は2024年に「電気自動車両発展政策(2024〜2030年)」を発表し、2030年までに電気自動車保有台数3万台を目指すとともに、税制優遇、グリーンローン、物流・旅客輸送の電動化促進などの一連のインセンティブを打ち出しました。しかしながら、電気自動車の販売は依然として低調であり、2024年7月時点での登録台数は約1,600台にとどまっています。
BYDが当初掲げていた年間2万台の生産計画に対して、仮にその半分を輸出に充てたとしても、カンボジア国内で年間1万台を消化するのは難しいとみられます。今回の生産能力の引き下げは、カンボジア市場の規模的な制約を考慮した結果である可能性があります。
タイとカンボジアにおいて具体的な進展を見せる一方で、BYDはインドネシアでも一定の成果を上げています。2024年4月には、インドネシアの工業団地開発企業Suryacipta Swadayaが、BYDが「スバン・スマートポリタン(Subang Smartpolitan)」に電気自動車工場を建設すると発表しました。この工場は108ヘクタール以上の敷地面積を誇り、同工業団地で最大のテナントとなる予定で、2026年1月の稼働開始を目指しています。
一方、ベトナムにおけるBYDのプロジェクトは順調とはいえません。当初はフーコア工業団地に100ヘクタールの電気自動車工場を建設する計画でしたが、2024年3月に延期が発表され、同年5月には現地の主要ディーラーグループであるNEHとの提携も解消されました。BYDはベトナムへの海外展開方針に変更はないと主張していますが、NEHの撤退は市場開拓に実質的な影響を及ぼす可能性があります。
BYDがベトナムでの電気自動車工場建設を延期した背景には、インフラ整備やサプライチェーンの課題に加え、政策環境や市場条件の不確実性がプロジェクト推進を困難にしていることが要因と分析されています。