BYD:国内は伸び悩み、海外で急成長――二本柱戦略で販売目標は射程内か?

今年7月、BYDの新エネルギー車販売台数は34.43万台となり、前年同月比ではわずか0.23万台(+0.56%)の増加にとどまり、前月比では10%以上の減少を記録しました。この数字から、市場全体が安定的に推移する中で、BYDの国内市場における販売成長が鈍化していることが浮き彫りになっています。
国内販売の伸び悩み:市場シェアは飽和、高級化戦略は壁に直面
BYDの販売成長の鈍化をどう評価すべきか。それにはまず、BYDが中国の新エネルギー車市場で35%以上のシェアを獲得しているという事実に注目すべきです。百社以上が競い合う「内巻(過当競争)」市場において、これはまさに「天井」ともいえる成果です。
中国のスマートフォン業界を例に取れば、過去20年でこのレベルのシェアを達成したのはノキアと、2019〜2020年のファーウェイのみ。高い市場シェアを維持したまま成長を続けるには、市場自体の大幅な拡大が不可欠です。
しかし現実には、国内市場の成長ペースは明らかに鈍化しています。2024年末には新エネルギー車の普及率が45%を超えましたが、2025年1〜7月は45〜55%の間で推移しており、ここ数カ月間で再び大きく伸びる兆しは見えていません。加えて、自動車市場全体の規模も縮小傾向にあり、新エネルギー車の絶対的な成長余地も次第に限られてきています。
製品戦略の面でも、BYDは試練に直面しています。以前は大幅な値下げで販売を牽引してきた「漢」「唐」「シール(海豹)」などのモデルは、現在では「コストパフォーマンスの罠」に陥っています。つまり、ハイエンド層の顧客を失い、価格競争力に優れる他社(Geely、Chery、Xpeng、LeapMotorなど)に中・低価格帯市場を奪われている状況です。
2025年7月には、プラグインハイブリッドであるDM(デュアルモード)モデルの割合が47.84%に回復しましたが、依然として50%には届いておらず、EVへの完全移行に向けた戦略にも不安定さが見えます。
一方、高級市場を狙った「DENZA(騰勢)」「仰望」「方程豹」などのブランドは、その場で旋回、水たまり走行、車体ジャンプといったユニークな機能を搭載し話題性を狙ったものの、実際には使用頻度が低く、プレミアム感の訴求には不十分でした。内装の質感やブランドイメージも、高級車ユーザーを真に満足させるまでには至らず、発売初期の好調を維持することができていません。
全モデルに対する大幅な値下げにより、20万元以上のBYD車に対するユーザーの信頼は大きく低下し、一部の既存ユーザーは「裏切られた」と感じており、リピート購入意欲や口コミ評価にも悪影響を及ぼしています。
海外輸出の爆発的成長:新たな成長エンジンが始動
国内市場の伸び悩みとは対照的に、海外市場ではBYDの販売が急増しています。2025年1月〜7月の海外販売台数は54万台を突破し、前年同期比で133.49%増、全体販売の**28.02%**を占めました。7月単月の輸出台数は初めて8万台を突破し、輸出比率は30.63%に達しています。
この急成長は、BYDが積極的に進めるグローバル化戦略の成果だと複数のメディアが分析しています:
- 世界各地での生産拠点構築
ブラジル・カマサリ工場は着工からわずか15カ月で初号車をラインオフし、現地最速記録を樹立。タイ・ラヨーン工場では9万台以上の納車を達成。 - 現地市場への迅速な投入
タイではローカル生産の「駆逐艦05」、インドネシアでは「海鷗」、マレーシアでは「元UP」などを展開し、東南アジア市場での存在感を急拡大。 - 自社物流ネットワークの構築
自社保有の自動車専用船「BYD西安」「BYD長沙」の運用により、グローバル納車のスピードと柔軟性を確保。 - 幅広い製品ラインナップ
コンパクトSUVから高級MPVまでを網羅し、PHEV+BEVのダブル戦略を海外市場でも推進。
- 世界各地での生産拠点構築
さらに、海外市場における新エネルギー車の普及率はまだ初期段階にあり、現地ブランドの影響力も限定的。BYDは、電動化技術、サプライチェーンの内製化、独自開発力において他社を大きくリードしており、その優位性はますます際立っています。
総括:構造転換期の今、二本柱戦略で新たな成長を模索
BYDは現在、構造的な転換期の只中にあります:
- 国内市場:市場シェアはすでに飽和域にあり、高級化や製品戦略の見直しといった課題に直面。
- 海外市場:グローバル戦略が着実に成果を上げており、輸出拡大とブランド浸透が売上を牽引。
現時点では、海外市場の好調が続けば、年間550万台という販売目標の達成も視野に入る可能性があります。ただし、それには国内市場が再び成長を取り戻すことが前提となります。BYDにとっては、依然として大きな試練が続いています。