BYD、10月小売販売31.4%急落――短期的調整か失速の始まりか

10月、BYDは卸売で44.17万台という悪くない成績を記録しましたが、小売販売は295,871台となり、3年ぶりに30万台を割り込み、前年同月比31.4%減、前月比14.8%減となりました。13.2%の市場シェアで当月のメーカー小売販売トップを維持したとはいえ、この明確な落ち込みは業界の大きな注目を集めました。自動車市場全体が0.5%微減、新エネルギー車(NEV)が7.2%成長する中で、BYDがトップ10の中で唯一大幅な下落を示したことは、特に異様に映ります。

業界全体から見ると、BYDの後退は市場全体の下落によるものではなく、トップ陣営内部で明暗が分かれた結果です。フォルクスワーゲンやトヨタなどの伝統的合弁ブランドは引き続き低迷しており、地場ブランドや新勢力は強い成長を示しています。Geelyは前年同月比36.8%増、ファーウェイ系の「鴻蒙智行」は63.8%増となり、長安やLeapMotor(零跑)などのブランドはシェアと成長率がそろって上昇しており、NEV市場は構造的な分化を示しています。

販売の後退には複数の要因が重なっています。

    • 昨年第4四半期の高い前年ベース効果
      BYDは昨年第4四半期に3か月連続で30万台超を達成し、前年同月比の基準値を押し上げました。今年は業界トップ水準を維持していても、前年同月比のグラフ上では30%の「急落」として拡大してしまいます。成長率だけを見ると暴落のように見えますが、その一部は前期の基数効果によるものです。
    • 在庫圧力と政策による制約
      政府による自動車市場の過度な競争規制や、大量のディーラー在庫圧力を背景に、価格攻勢で知られるBYDは最近マーケティング戦略を変更しました。10月は販促を縮小し、一部ディーラーは在庫消化に転じました。チャネルは「規模拡大」から「効率向上」へと転換し、その結果、国内小売販売は大幅に下落しました。
    • 同クラス競争の全面的な攻勢とユーザーの関心の分散
      GeelyのGalaxy(銀河)、Xingyue(星越)、GWMのHaval、長安のQiyuan(啓源)などのブランドは相次いで価格を10~15万元区間まで引き下げましたが、BYDは追随できませんでした。コストパフォーマンスの面でBYDの伝統的な優位性は弱まっています。同時に、市場の注目はシャオミとAITO(問界)に大きく奪われました。シャオミ YU7 の3万台という販売は爆発的な話題性による衝撃となり、AITO M7/M8は主流家庭ユーザーの心をつかみました。インテリジェンス化のストーリーが全面的に主導権を握り、ハイブリッドはもはや話題を独占できなくなっています。
    • ヒットモデルがライフサイクルの天井に接近
      秦PLUS、宋シリーズ、シーガル(海鷗)、シーライオン(海獅)06などはいずれも1〜2年のライフサイクルを持つ成熟段階にあり、デザイン言語や装備構造に飛躍がなく、成長曲線は自然に鈍化しています。「小改良で販売を維持する」時代は終わりました。
    • 中高級モデルの弱点が集中して露呈
      DENZA(騰勢)は販売が半減し、N8L/N9は安定性を欠いています。Yangwang(仰望)はスケール形成が難しく、方程豹は「鈦7」を除き、他のモデルが販売の穴を埋められていません。BYDが3年間待ち望んだ20万元以上クラスの販売拡大は、10月に構造的な難題であることが明らかになりました。
    • 業界サイクル要因が変動を拡大
      「9・10月」シーズンの販促は前倒しで消費され、ユーザーは広州モーターショーや年末のキャンペーンを待つ傾向が強まり、需要は全体として後ろ倒しになりました。規模の大きい企業ほど、この変動の影響はより顕著になります。

BYDの10月小売の低迷について、中国の一部メディアは慣例的に分析しており、今回の販売減少は失速ではなく、「野蛮な拡張」から「システム進化」への転換過程の一部であり、短期的な変動はあっても、より深い競争の局面に入っているため、現在はBYDの「息継ぎ段階」にすぎないとしています。

しかし、BYDの10月の販売急落は紛れもない事実です。どれだけ前向きに解釈しても、喜ばしい進歩とは言えません。まるでトカゲが尻尾を切って逃げるように、危機を回避して生き延びるための行動に過ぎません。

 

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