BYD、日本初の軽EV「RACCO」を正式発表──2026年夏発売、軽自動車市場に本格参入

10月29日、BYDは東京で開幕した「ジャパン・モビリティ・ショー」において、日本市場向けに開発した初の軽自動車規格の電気自動車「RACCO(ラッコ)」を正式に発表しました。車名は中国語で「海獺(ラッコ)」を意味し、同社の「オーシャンシリーズ(海洋系列)」のネーミングを継承しています。発売は2026年夏を予定しています。
RACCOは日本特有の軽自動車規格に準拠したモデルで、全長3395mm、全幅1475mm、全高1800mmのコンパクトなボディに4人が乗車可能です。スクエアでシンプルなデザインを採用し、後席にはスライドドアを備えるなど、スタイリッシュさと実用性を両立させています。
パワートレインは前輪駆動のシングルモーター構成で、20kWhのリン酸鉄リチウム電池を搭載しています。WLTCモードでの航続距離は約180km、最大100kWの急速充電にも対応します。販売価格は260万円前後と見込まれ、日本で人気の軽EV「日産サクラ(Sakura)」の253.6万円に近い価格設定となっています。
RACCOは、BYDが日本で展開する5番目の乗用車となります。すでに「Atto 3」「Seal(シール)」「Dolphin(ドルフィン)」などを投入していますが、日本市場はいまだに国内メーカーのハイブリッド車が主流であり、2023年1月の参入以来、2024年6月までの累計販売台数は約5300台にとどまっています。
需要喚起のため、BYDは9月に最大100万円の購入補助キャンペーンを実施しました。国の補助金と組み合わせることで、一部モデルでは実質価格を半額近くまで下げることが可能となっています。同社は最終的に日本で8車種(プラグインハイブリッド車を含む)を展開する計画で、2025年末までに販売店を現在の64店舗から100店舗へ拡充し、アフターサービス体制の強化も進めています。
ブルームバーグNEFのデータによりますと、2023年の日本におけるEV販売台数は約14万台で、新車販売全体の3.5%に過ぎません。そのうち半数以上が軽自動車です。軽自動車はコンパクトなサイズ、低い税負担、維持費の安さから、通勤や日常の移動手段としてすでに定着しており、都市部の狭い道路環境にも適していることから、最もコストパフォーマンスの高い自動車として広く支持されています。
今回のRACCO投入は、BYDがこの需要の高いセグメントを本格的に狙う動きといえます。ただし、近年日本ではEVへの関心がやや低下しており、補助金によって支えられた一部のニッチ市場にとどまっているのが現状です。2025年のEV市場シェアは3.4%を超えない見通しで、今後さらに縮小する可能性もあります。
業界関係者の間では、「もしRACCOが日本市場で販売不振に陥るようであれば、BYDは仕様を見直し、中国国内向けに改良版を投入する可能性もある」との見方が出ています。
BYD RACCO

写真:BYD