長安汽車、ブラジル工場が稼働開始 グローバル拡大加速も販売減速と収益圧迫が課題

3月27日、長安汽車(Chang’an)はブラジル・アナポリス(Anápolis)に所在する生産拠点の稼働を正式に開始しました。式典には、ブラジルのルラ大統領、アルキミン副大統領をはじめ、地元政府関係者が出席しました。ルラ大統領は挨拶の中で、「中国はブラジルにとって最良のパートナーである」と述べ、長安プロジェクトが現地における雇用創出や生活水準の向上に寄与し、ブラジルの再工業化を後押しするとの期待を示しました。
稼働式では、ブラジルでの現地生産第1号となるUNI-Tが正式にラインオフしました。同モデルはブラジル市場向けに開発されたもので、1.5T BlueCore Flexデュアルフューエルエンジンを搭載し、ガソリン、エタノールおよび任意の混合燃料に対応しています。計画によれば、同工場は初期段階で3モデルを生産し、ガソリン車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車といった複数のパワートレインをカバーします。すべての車種にフレックス燃料システムが搭載される予定です。今後、長安は同拠点を活用し、ハイブリッド車および電気自動車の投入を進めることで、電動化展開を加速させる方針です。
現在、長安汽車は世界で76の工場を展開しており、ブラジルプロジェクトは同社のグローバル戦略における重要な拠点の一つと位置付けられています。
近年、長安汽車は国有企業として比較的堅調な業績を維持してきました。2025年には291.3万台を販売し、BYD、上汽(SAIC)、吉利(Geely)、一汽(FAW)に次ぐ第5位に位置しています。
しかし、2026年に入ると状況は一変しました。年初2カ月の販売台数は28.66万台で、前年同期比34.43%減となりました。このうち自社ブランドは40.55%減、新エネルギー車は26.43%減となっています。一方で、同社は通期販売目標として330万台(前年比13.3%増)を掲げており、その内訳は新エネルギー車140万台(同26.2%増)、海外75万台(同17.7%増)となっています。年初の実績を踏まえると、目標達成に向けて今後の販売には大きなプレッシャーがかかる見通しです。
収益面では、2025年前三四半期において売上高は小幅な増加にとどまった一方、純利益は前年同期比14.66%減少しました。販売費用は56.25%増と大幅に拡大し、政府補助金の減少も重なって、利益余地は一段と圧縮されています。さらに、業界全体での価格競争の激化や在庫圧力の上昇も、収益性を継続的に圧迫しています。
資本市場においても、2023年以降、同社の株価は約21元から10元前後まで下落し、累計でおよそ50%の下落となっています。これは、同社の業績に対する市場の懸念を反映した動きとみられます。
こうした状況の中、長安汽車は中長期の発展目標を改めて明確にしました。3月中旬の投資家向け説明会では、2028年前後までに自社ブランドの累計販売台数4,000万台を達成し、2030年には年間販売台数500万台を突破する方針が示されました。あわせて、新エネルギー車比率60%超、海外比率35%超を実現し、世界の自動車ブランドトップ10入りを目指すとしています。
この規模拡大を支えるため、同社は今後3年間で43の新モデルを投入する計画であり、そのうち35モデルが新エネルギー車となります。車種はセダン、SUV、MPV、ピックアップ、商用車にわたり、2028年までに全カテゴリーを網羅する製品ラインアップの構築を目指します。同時に、海外市場向けには26モデルを投入し、140以上の国・地域をカバーする計画です。
総じてみると、長安汽車は積極的なグローバル展開と規模拡大の目標を掲げ、海外における現地化を加速させています。一方で、販売の減速や収益性の低下といった課題も顕在化しており、戦略の推進と実際の経営状況との間に乖離が生じつつある状況です。

写真:長安汽車