長安汽車が「副部級中央企業」に昇格 東風との再編構想はなぜ止まったのか?

長安汽車(Changan Automobile)は6月5日、公告を発表し、6月4日に間接的な支配株主である兵器装備集団から通知を受けたことを明らかにしました。兵器装備集団は国務院国有資産監督管理委員会(国資委)より通知を受け、国務院の承認を経て、兵器装備集団の分割が実施されることとなりました。

この分割により、自動車事業は独立した中央企業として分離され、国資委が出資者の責任を履行することになります。また、分割後の兵器装備集団の株式は、所定の手続きに従い中国兵器工業集団有限公司に出資として注入されます。この分割の結果として、長安汽車の間接的な支配株主は、自動車事業を担う新たな中央企業に変更されますが、実質的な支配者に変更はありません。

同日、東風汽車股份有限公司(以下、東風股份)も公告を発表し、6月4日に間接的な支配株主である東風公司から通知を受けたと述べました。それによると、東風公司は現時点で関連資産や事業の再編には関与しておらず、同社の通常の生産・経営活動には影響がないとしています。

これら二社の公告により、市場で広く期待されていた「東風+長安」の再編構想はいったん収束した形となりました。

振り返れば、今年2月に東風汽車と長安汽車はそれぞれ「支配株主が他の国有中央企業と再編を協議中」との趣旨の提示公告を発表し、市場では両社の合併の可能性が取り沙汰されました。仮に両社が合併すれば、年間販売台数は合計510万台を超え、BYDを抜いて中国最大の自動車グループになると予測され、株式市場では関連銘柄が大きく上昇しました。

しかし、6月5日時点の情報によると、統合作業は予定通りには進んでおらず、市場もすぐに反応を示しました。当日、長安汽車の株価は3.34%上昇した一方で、香港市場の東風グループ株は14%以上下落しました。

今回の再編構想が頓挫した背景について、一部の分析では、長安汽車と東風汽車の行政格付けの違いが主な障害とされています。中国の自動車業界において、副部級の中央企業は中国第一汽車集団(一汽 FAW)と東風汽車集団が該当します。長安汽車の間接的な支配株主である兵器装備集団も副部級ですが、長安汽車自体はそれより下層の庁級にとどまっており、合併後の経営権の帰属について争いが生じる可能性があるとされます。

しかし今回、兵器装備集団の分割再編を通じて、長安汽車は兵器装備集団傘下の庁級企業から、一汽や東風と同格の副部級中央企業へと「昇格」し、実質的な支配者に変更はないとしています。

別の分析では、当局の狙いは明確で、まず新たな中央企業の「器」を作り、そこに長安を収めた上で、今後東風の資産を吸収し、将来的には一汽さえも吸収する可能性があるとしています。

これは最も合理的な戦略です。さもなければ、国資委の観点から見て、副部級の自動車中央企業が現在の2社(一汽と東風)から、合併を経て3社(一汽、東風、長安)になるのは、戦略設計のロジックに反すると言えます。

したがって、再編は二段階で行われる可能性があり、まず市場適応力が高く経営状況の良好な長安汽車を新しい中央企業として設立。その後、この新設企業が東風の優良自動車資産を吸収し、不採算部門は再編、好調な部門は維持されるという流れになるでしょう。

また、ネット上では「今後設立されるこの新中央企業の名前を見れば、再編の方向性がわかる」との声もあります。「長安」という名前になれば再編は終了とみなされ、「中国南方汽車」などの名称であれば、今後東風汽車を吸収する可能性が高いと指摘されています。

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