レクサス、上海に中国初の工場着工──2027年EV量産へ 「本当に遅くないのか」問われる船出

6月27日、レクサスのEV新工場プロジェクトが中国・上海市金山区で正式に着工いたしました。これはレクサスにとって中国初の自社工場であり、同時に日本国外で展開されるトヨタの最新技術を用いた最初の完成車生産拠点でもあります。

このレクサス上海工場は、2026年8月の竣工、2027年からの量産開始を予定しており、初期の年間生産能力は約10万台と見込まれています。生産される車両は中国市場向けのみならず、日本やその他の海外市場への輸出も視野に入れています。工場では95%以上の部品を現地調達する計画も掲げており、長江デルタ地域の産業基盤、物流網、そして人材ネットワークを活用した、電動化モデルの迅速な商品化が期待されています。

中国市場に合わせた新体制「RCE」で開発を加速へ

トヨタはすでに「RCE(中国主導開発)」体制を導入しており、中国のエンジニアをチーフエンジニアに据えることで、より中国市場に即した電動化・知能化製品の開発を進める方針を明確にしています。今回の工場建設もその戦略の一環とされ、レクサスも今後は「中国のニーズを中国の速度で反映したモデル」の展開を目指すことになります。

しかしその一方で、「本当にこのタイミングで間に合うのか」といった疑問の声も、市場から上がっています。

EV市場における出遅れ感と、ブランド力頼みの危うさ

2027年の量産開始というスケジュールは、目まぐるしく変化する中国の新エネルギー車市場においては、決して早いとは言えません。すでに多くの先行メーカーがしのぎを削っている中での「ようやくの第一歩」と見る向きもあります。

現時点では、レクサスは輸入車市場において依然として高い存在感を示しており、たとえば今年5月のデータでは「ES」が1万台以上を販売し、輸入車販売ランキングのトップとなっています。ただし、その背景には大幅な値引きが存在しており、利益率を犠牲にした販売戦略であるという側面も否めません。特にSUVカテゴリーにおいては、「RX」や「NX」などが競争力を失いつつあり、モデル全体の刷新が求められている状況です。

また、レクサスの電動SUV「RZ」に関しては、市場での評価が芳しくなく、実際に路上で見かける機会もほとんどありません。加えて、「ディーラーがメーカーからの在庫車の受け取りを拒否した」との報道もあり、市場や流通面における課題が浮き彫りとなっています。

中国の高級EV市場にチャンスは「まだある」という声も

とはいえ、「レクサスの中国EV戦略は決して遅すぎるわけではない」という見方も存在しています。中国の35万~50万元の高級EV市場では、現在、実質的に成功しているのはファーウェイ系の「AITO(問界)」ブランドのみであり、BBA(メルセデス・BMW・アウディ)各社は、この価格帯でのEV展開に苦戦しています。

この空白地帯において、レクサスが本気で商品力の強化とブランド刷新に取り組めば、一定の地位を確保できる可能性もあります。2027年に新型の「ES」純電動版や、新たなEV SUVが中国で生産・販売されるようになれば、巻き返しのチャンスは残されているという意見もあります。

問われるのは「速度」より「適応力」

レクサスの上海工場の着工は、日本の高級ブランドが中国に本格進出するという大きな転換点となります。しかし、2027年の市場環境は現在とは大きく異なる可能性が高く、ブランドの知名度や既存モデルへの信頼だけでは競争を勝ち抜くことはできません。今後の成否を左右するのは、スピードではなく、いかに柔軟かつ市場ニーズに即した商品をタイムリーに投入できるかという「適応力」にあると言えるでしょう。

さて、もし2027年にレクサスの純電動セダンやSUVを目にしたとき、皆さまはそれを「買いたい」と思えるでしょうか?

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