GAC×ファーウェイ、「啓境」量産へ──「界」ブランドを超えた対等共創が映す新たな提携モデル

10月16日、GAC(広汽)とファーウェイ(華為)が共同で立ち上げた高級スマート新エネルギー車ブランド「啓境(Qijing)」は、初の量産モデルのデザインが確定し、量産準備段階に入ったと発表しました。

「啓境(Qijing)」は、GACとファーウェイが2025年9月19日に正式発表した、30万元(約600万円)以上の市場をターゲットとする高級スマートモビリティブランドです。これは、2024年9月に再始動した両社の協業が、初めて完成車ブランドとして具体化したことを意味します。

ブランドの位置づけと生産計画

「啓境」ブランドは2024年11月に設立が発表され、2025年9月に正式公開されました。ブランドの主な市場は30万元以上の高級スマートEVセグメントで、中大型セダンおよびSUVを中心に展開します。

現在、開発中のモデルはコードネーム「F03」と「F05」の2車種で、F03は中大型セダン、F05はSUVです。いずれもGAC AION第一工場での生産が予定されており、初の量産車は2026年に発売・納車を予定。2028年までに3モデル体制を構築し、年間生産能力は約15万台を見込んでいます。

販売体制は「直営+認定販売」方式を採用し、GACの既存販売ネットワークに加え、一部のファーウェイ実店舗のリソースも活用する計画です。初の啓境ブランドショールームは、2026年春節(旧正月)前後に主要都市でオープンする見通しです。

ファーウェイ「界」シリーズとの協業モデルの違い

「啓境」は、ファーウェイがこれまで展開してきた「問界」「智界」「尊界」などの「界」シリーズとは異なる協業モデルを採用しています。

これらの「界」ブランドはいずれもファーウェイの「鴻蒙智行」体系に属し、ファーウェイが製品企画・販売・チャネルを主導し、完成車の生産はSERES(賽力斯)、Chery(奇瑞)、BAIC(北汽)などが担当してきました。

一方、「啓境」は「鴻蒙智行」体系には属しておらず、GACとファーウェイが共同出資・共同運営するブランドです。GACが車両開発・生産・品質管理を担い、ファーウェイが自動運転システム、車載OS、マーケティング支援を提供するという明確な役割分担が取られています。

両社は、「啓境」は「ファーウェイが造る車」の延長ではなく、ブランド単位での新たな共創モデルであると強調しています。

2024年下半期以降、ファーウェイの自動運転・車載システム・マーケティング部門のチームは、すでにGAC啓境の開発センターに常駐し、GACのエンジニアと同じオフィスで共同作業を行っています。

さらに啓境は、ファーウェイのIPD(統合製品開発)およびIPMS(統合製品マーケティング)プロセスを導入し、製品開発と市場対応を同時進行で進める体制を構築しています。

ファーウェイの新たな自動車事業モデル

「啓境」の誕生は、ファーウェイが自動車分野で初めて「対等な立場での共創」という形で自動車メーカーとブランドを共同開発する事例となります。

従来の技術提供型あるいは主導型の参画とは異なり、今回は企業間でブランド運営を共同で担う点が大きな特徴です。

GACにとって「啓境」は、高級EV戦略の中核を担う新ブランドであり、ファーウェイにとっては自社の技術体系と自動車生産プロセスを融合させる新たな実証プロジェクトとなります。

GAC「啓境」が公開した初の量産モデル

写真:Weibo啓境公式アカウント

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