地場メーカーの長城汽車、BYDを告発
4月25日、地場メーカーの長城汽車は、同じ地場新エネ車メーカーのBYDに喧嘩を売った。
長城汽車は、BYDの2つの車種、秦PLUS DM-iと宋PLUS DM-iの蒸発污染物質排出が基準をクリアしていない疑いがあるとして、4月11日に生態環境省、国家市場監督管理総局、工業・情報化省に通報資料を提出したと発表した。車両から蒸発した汚染物質が排出基準超えとの疑いが指摘されたのは、この2つの車種に常圧燃料タンクを搭載しているためである。
2時間後、BYDは迅速に対応し、「われわれはいかなる形式の不正競争行為にも断固として反対し、法的措置をとる権利を留保する」と発表した。
ガソリンは沸点が低く揮発しやすい特性が知られている。自動車が走行中に車体が揺れ続けるため、ガソリンが燃料タンクの中で揺れ動き、さらにエンジンが働いている間にガソリンが流れているため、燃料タンクにはガソリン蒸気が溜まっている。
ガソリン蒸気が危険であるために、自動車工学的に提案された解決策は、タンクの上部にパイプをつなぎ、タンク内のガソリン蒸気を専用のチャコールキャニスター(Charcoal Canister 活性炭が詰められた缶状タンク)内に導くことである。
Wikipediaを調べてわかるように、チャコールキャニスターにガソリン蒸気を流入、放出するための配管や逆止弁を組み合わせてガソリン蒸発ガス排出抑止装置を構成している。配管には燃料タンクなどからのガソリン蒸気を回収する経路と、エンジンの吸気系へガソリン蒸気を含んだ空気を送る経路、外気を取り入れる経路がある。
しかし、このような設計は、実際には比較的大容量のバッテリーパックを搭載したPHEV(レンジエクステンダーEVを含む)には適していない。理由は、PHEV車のエンジンが全時間帯で作動していないためである。従来の自動車の燃料タンク内圧は一般的に6-10kPaであるのに対し、PHEVの燃料タンク内圧は35-40kPaと従来のガソリン車の4-6倍に達し、より高い圧力に耐える燃料タンクが必要である。PHEVに常圧燃料タンクを使用した場合は、エンジンが停止中に、燃料タンクの中のガソリンは持続的に揮発して、チャコールキャニスターの活性炭の吸着量は限られ、いったん吸着量の限界を超えれば、チャコールキャニスターが過負荷状態となり、ガソリン蒸気はチャコールキャニスターの通気孔から車の外に押し出され、污染物が大気中に放出されてしまう可能性はある。
今回長城汽車の公開通報は、BYDの排出基準未達にフォーカスしているが、重要な根拠はBYDがPHEVに常圧燃料タンクを使用しているためである。
これについて複数の業界関係者は、「PHEVに高圧タンクを必須とする規定はないが、蒸発物排出については常に要求されており、高圧タンクの使用が一般的な解決策である」と説明した。
特に排出基準の国6の蒸発物及び給油排出基準に適合するため、PHEVに高圧タンクを採用することが業界の共通認識となっている。
しかし、高圧タンクは常圧タンクよりコストが高いのも明らかである。つまり、長城汽車は、BYDはコスト削減のために排出基準を守らない疑いがあると指摘しているわけである。もちろん、この指摘は、BYDのPHEVに搭載されている常圧タンクが排出基準に達していないことを前提にしている。