NETAの債務株式化が頓挫:工場停止・供給網崩壊、投資家は創業者の退陣を要求

5月29日付の複数のメディア報道によると、NETA(哪吒汽車)が債務圧力の緩和と新たな資金調達を目的として進めていた「デット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)」の試みが、最終的に失敗に終わったことが明らかになりました。かつて注目を集めたこの新興EVメーカーは前例のない危機に直面しており、複数の投資家は支援の条件として、NETA創業者で現CEO兼会長の方運舟氏の解任を求めています。
報道によると、NETAは現在、サプライヤーに対して約60億元(約1,200億円)の未払い債務を抱えています。当初の計画では、そのうち30億元を債務株式化によって解消し、それを新たな資金調達の前提とする方針でした。しかし、実際に同意したのは約134社にとどまり、合計で20億元強の債務しか処理できていません。残りの債務については、多くのサプライヤーが慎重な姿勢を崩さず、交渉は難航しています。
こうしたサプライチェーン上の行き詰まりは、NETAの流動性危機をさらに深刻化させています。NETAの親会社であるHOZON(合衆新能源汽車)では、国有資本を有する株主の一部が取締役会の招集を提案し、方運舟氏の解任を目指していると報じられています。また、5月13日には、方氏が保有する約2,000万元相当の株式が裁判所によって凍結され、同氏が経営権を失いつつあるとの見方が広がっています。
なぜ投資家はここまで強硬な姿勢を取るのでしょうか。NETAに近い関係者によると、「創業者の排除」が投資家の間で共通認識となっており、これが主要な要因だとされています。NETAは2021年以降、累計で183億元もの赤字を計上し、負債比率は一時217%にまで達しました。さらに、主要サプライヤーであるCATL(寧徳時代)からの供給も停止され、工場の稼働停止や直営店の大量閉鎖、全国300社以上のディーラーによる債権回収運動などにより、企業運営は全面的な麻痺状態に陥っています。
NETAは海外市場、特にタイに戦略の軸足を移そうとし、現地で100億バーツ(約440億円)の与信枠を確保しましたが、国内の工場停止により、海外からの注文の履行も困難な状況にあります。今年3月にタイで開催されたディーラー大会でも、NETAは「自助施策を積極的に進めている」とアピールしましたが、実際の進展は芳しくありません。
2024年12月には、当時のCEOだった張勇氏が顧問に退き、方運舟氏が再び経営の指揮を執りました。同氏は「六大改革」と「第二の創業」戦略を掲げ、2〜3年以内に国内外の販売台数を半々にし、2026年には黒字転換を達成すると公言しました。しかし、現時点では改革の成果はほとんど見られず、むしろ研究開発チームの解散、リストラや給与削減といった混乱が相次いでいます。
こうした状況のなか、投資家の姿勢はより一層明確になっています。「トップが代わらなければ資金は出さない」というのが一致した見解です。NETAが事業を立て直すには、短期間で「経営陣の刷新」「新たな資本の導入」「サプライチェーンの再構築」という3つの重要な条件を満たす必要があります。仮に年内に生産を再開し、月間生産台数が5,000台以上に回復できれば、今後3年間の生き残りも期待できるかもしれません。
しかし、このチャンスの窓は極めて短く、もし12カ月以上遅れれば、サプライヤーと市場の信頼は完全に失われ、最終的には「身売り」すら不可能になる恐れがあります。
総じて言えるのは、NETAにはもはや退路がないということです。創業者が退かなければ資本は入らず、資本が入らなければ再建も不可能です。NETAは今まさに、新興EVメーカーの淘汰の波に飲み込まれようとしています。